君と僕とエトセトラ


((てのひら合わせるのがいい))


蛍の機嫌が、悪い。


『どうしたの、蛍?』
『何が?』
『いや、何か…』

むすっとしちゃってさ?
忠君と分かれてからの家までの道のりを、無言で歩く。私は少し、駆け足気味。

練習試合がそんなに面倒なのかな…?
でも蛍は部内で一番の長身だし、折角スタメン入りしたのに。
「面倒」で済ませて欲しくないなって、私は菅原君の事を思いながらため息を一つ。



『何』
『え、』
『ため息聞こえた』
『あ、えーと』
『そんなに生徒会大変?』
『えっ』

立ち止まって、レンズ越しに私を捕らえたその瞳は。
じぃっと、私を映していて。
私は私で、いきなり生徒会の話題が出てきてひどく戸惑う。何でいきなり生徒会?

『生徒会は…もうだいぶ落ち着いてますケド…?』
『…ふーん』
『?』
『何で敬語?』

少し笑った蛍はぽんぽんと私の頭を撫でた。
子供扱いですか蛍君、君は少しは私を先輩扱いしたらどうかね?うん?…なんて言っても「は?嫌だけと?」とかそんな返事が返ってくることは目に見えているから言わない。
どうやら試合の事では無い様だからまぁ、いいか。


『けい…』
『何?』
『手、繋ぎたい…』
『…は?』

少し前に居る彼に左手を差し出せば、予想外だったのか珍しく間の抜けた様なポカーンとした顔をしていた。
次にプスーと笑った蛍は甘えたですねー名前さん?なんて言いながら手を重ねる。白くて細くて。
でも、蛍の手はちゃんと男の人の手をしていた。


『やだ』
『は?何が?』
『てのひら合わせるのがいい』
『…ねえ、どうしたの大丈夫?』

握られた手を離して指を絡める。
所謂「恋人繋ぎ」と言うやつ。
蛍の手、本当に大きくなったな…。
少し感触を確かめていたら蛍が心配そうに私を呼んだ。
私からこんな事するの初めてだから、戸惑うのも仕方ないと思う。因みに言うなら私も段々恥ずかしくなってきた。

『…顔赤いデスよー名前先輩ー?』
『う、』
『何、本当にどうしたの、』
『わ、私から甘えちゃ駄目なのですか』


恥ずかしくて、下を向く。
到底顔なんて上げられそうもない私が絞り出すようにそう言うと、ふわっと、優しい蛍の匂い。
前を見たらセーターが見えて、背中をぎゅっと押されてそれに埋まる。
ああ、どうやら抱きしめられたらしいと気付いた頃、ぐぐっと背中を丸めた蛍の唇が耳に押し当てられた。

『あんまり可愛いこと言わないでもらえるかな…』
『ひ、ぁ…っ!?』
『…煽るなよ…僕結構余裕無いんだから』
『みみ、だめ…くすぐったい…っ』

蛍の声がダイレクトに鼓膜を揺すっていく。
背中がぞわぞわとして、変な声が出ないようにお腹に顔を押しつけた。



『ん…っ』
『もしかして、わざと?』
『?』


しばらく二人して抱きしめあって、蛍がクスクス笑いながら口を開く。
わざとって、なにがだろう。

だったらとんだ魔性だねってまた耳元で囁かれた。




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『へぇ、耳弱いんだ?』
『やだぁっあんまり触らないで…っ』
『可愛い』
『ひっ』
『(真っ赤…)…おいしそう…、』
『えっ!?…食べないでよっ!?』









耳弱い新発見してちょっと嬉しかった月島君。食べるの意味はお互い一致してない。
ちょいちょいヌフフな事ぶっ込んで行きたいです。
ヌフフ。

20140531
20140604



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