君と僕とエトセトラ


((私の方が大人なので!!!))






『おはよーツッキー!』
『うるさい、山口』
『あれ?名前さんは?』
『…知らない』


朝迎えに行ったら既に居なかった。
そんな言葉は全部噛んで飲み込んでしまう。
名前、朝出るの早すぎじゃない?
バカなの?






 :
 ・


『名字?ああ、多分生徒会室じゃないかな…?』
『生徒会?』
『えっ名前さん朝も生徒会の仕事してんすか!?』
『うん、ホントこの時期だけなんだけど』
『新年度はなー大変だって言ってたっすもんねー!』
『あっれぇー?もしかして、月島知らなかった…とかぁ…?』

ギロリ。
別に睨んだつもりはないけど殺してやりたい気持ちを素直に込めて日向を見たら田中さんの後ろへ隠れた。

折角(当たり障りのなさそうな)菅原さんに訊いたのに、田中さんや日向は何処からか涌いてくるんだもんな…まったく鬱陶しい。

これ以上話をするのも面倒だからとりあえず菅原さんには頭を下げて体育館へ向かう。どうやら朝練には来るらしいし。



『月島こっえー…』
『アイツ名前さんから何も聞いてないのか?』
『こら、田中!日向も!あまり月島をからかうんじゃないぞ』


そんな会話があったとか、僕は知らないし知りたくもない。









『困りました…』
『何してるの?』
『…あ、蛍!良いところに!』


昼休み。
一階の掲示板前で絶望していたら救世主が現れた。
職員室に行った帰りらしい、プリントを持った蛍が近づいてきて。
言ったら笑われそうな気もするし、お願いしたら嫌そうな顔もされそうだけど…仕方ない。


『このポスターを貼りたいんだけど』
『手が届かないんだ?』
『ぐぅ…』

プークス吹き出して笑いやがる彼はこう見えてもう二年もお付き合いしている彼氏なのです。
まぁ、今に始まったことではないので怒らないでいてあげます。私の方が大人なので。

私の方が大人なので!!!



『蛍に言った私がバカでした。踏み台もって…』
『待ってよ』
『んゎっ!?』
『これで届く?』
『うん届く…って!何で抱っこ!?』
『うるさい。早く貼りなよ…』


突然足が地面から離れて浮遊感。
気づいたら蛍の綺麗な顔が目の前に有って心臓が跳ねた。

うう、通り過ぎる人たちがこっちを見ている気がする…。
震える手で画鋲を刺していると、蛍が小さく呟いた。

『いつから』
『…え?』
『生徒会』
『い、一年の時から…』
『ふーん』

素っ気ない返事に聞こえるけど、蛍が聞いてきたんだから多分気になってたんだろう。
私も別に隠してた訳じゃないし。


『何でそんなに忙しいの』
『各部活動のポスターに許可印捺したりとか、委員会の名簿作成とか』
『雑用じゃん』
『生徒の為にあるのが生徒会でーすー』

よし、やっと貼れた!
しっかりと刺さった画鋲を確認して、終わったよ、ありがとうと彼を見るけど下ろしてくれる気配がない。
ちょっと。流石に恥ずかしいんですけど!


『蛍…ありがとう。終わったから下ろして』
『…』

肩をトントンと叩くと何故か不満そうに眉根を寄せた。
蛍は思いついた事を直ぐには言わない人だから、多分言いたいことをまとめているんだろう。

『蛍?』
『…名字先輩は背が小さいからこういう仕事苦労しますね』
『な…っ、』


そっと下に降ろされて、頭を撫でられた。
彼女として頭を撫でられるのは、嫌いじゃない。
でもその一言が、余計と言いますか!
仮にも先輩何ですけど!?

私の反論は聞く気がないのか、彼は言うだけ言って踵を返す。
すたすたと教室に向かう大きな背中を、見えなくなるまで睨んでやった。




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月島君はオブラートに包もうとすると、結果包めず破れてポイしてそのまま発言しちゃう子だとおもいました(当社比)



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