つきしまくんとちいさいせんぱい




→三年主/マネージャー







『つ、つきしま、くん…っ』


部活前、準備もそろそろ終わる頃。
小さな、本当に小さな声で呼ばれた。
辺りを見渡してみるけど誰もいない。
気のせいか、と改めて向き直ると次はTシャツの裾を引かれて。
ああ、そうか。


『ああ、名前先輩でしたか!小さくて見えませんでした!』
『む、』

顔をほぼ真下へと向け、にっこり。自分でも引くくらいの笑顔を浮かべると、脛に衝撃が走った。
…全然痛くないケド。


『痛いじゃないですか。折れたらどうしてくれるんですかー』

わざとらしい口調で続けて膝を折り、彼女と目線を合わせる。
鼻がぶつかってしまいそうだ、なんて少しどきどきしながら見つめると名前先輩はうるうるした目で僕の眼鏡を取って…?


『え、なに、』
『えいっ!』
『んがっ!?』

ごちん!とかかわいいものではなく、ゴッて。すごく鈍い音だった。
…脳味噌が震えた。
彼女に頭突きされたんだと気付いたのは、一通り痛さに悶えた後だった。


『こんの…石頭め…っ』
『つきしま君が意地悪ばかり言うからです!』
『だからって頭突きとか無いデショ…』

星が見えましたよ、と浮かんだ涙を指で拭って彼女を見る。
僕の眼鏡を掛けてこれに懲りたら少しは先輩を敬いなさい?なんて誇らしげに笑うから。


『……先輩、』
『何?』
『眼鏡返して下さい。後…、似合いませんねー、眼鏡!』

吹き出すのを我慢するように笑って見せたら、今度は本当に傷ついたみたいに眉をハの字にした。
ああ、もう本当に。


『…先輩はそのままで、十分可愛いですよ』
『…うん、う、ん…?…エ!?』
『遅…』
『いいいいま!何て!?』
『さーて、』
『つ、つきしまくんっ』
『そろそろ部活始まりますねー』
『つきしまくんっ』




(つきしまくんとちいさいせんぱい)










20140503




先輩可愛い病の月島蛍君15歳。


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