本当はきっと俺の方。






知ってた。

ずっと、見てたから。




気づいてた。

ただ、気づかない振りをしていただけ。









『いーわちゃん先輩っ!』
『……名字、また来たのか…』
『うぃー!差し入れー持ってきましたー!』

ほい、って売店の焼きそばパンが入った袋を突き出しニッコリ笑うのは、一つ年下の名字。
矢巾や渡と仲が良いらしく、二人を通じて俺とも顔見知りになった訳だが…どうやら随分と懐かれてしまったようで。


『お前、毎回良く買えるな…ウチの焼きそばパン人気ですぐ売り切れるのに』
『岩泉先輩の為なら、わたし授業なんかサボって並んじゃうー』
『……』
『ちょ、冗談ですって。オネーサンに頼んでるんですよー!だからそんな呆れた目で見ないでくださいっ』


そこまでアホしてませんーなんて、ホントなのか嘘なのかイマイチ分からない表情で笑って。
―――こんな感じで、ほぼ毎日コイツは俺に絡んでくる。いつかだったか、は、忘れたが…でもあれからほぼ毎日。



「わたし、岩泉先輩の事が好きなんです」



いつもみたいに、ホントなのか嘘なのか分からない表情で名字は笑った。
軽く感じるコイツの言葉を、本気に出来なかった俺はと言うと。

「へぇ、そりゃどーも」


なんて、実に冷たく。
否定も肯定もせず、受け入れも拒絶もしないまま。

流した。




『岩泉先輩?』
『あ?あぁ、悪い』

何思い出してんだ俺は。
礼を言って袋を受け取り名字を見るとあどけない笑顔が向けられる。
不覚にも、どきり、と心臓が大きく脈打つ。

『今日も部活、頑張って下さいね!』

いつもいつも、変わらない。
この笑顔は変わらない。


なのにどうして。



俺の心臓は日増しに煩く成るんだ。




end





△▼△▼△
元々別のキャラで、連載で考えていたもののリメイクなので少し可笑しいですがご了承ください。

岩ちゃん絆されてしまえばいいよ。


20150503
犬猫。

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