顔真っ赤だよ?
『三人とも、帰るよー』 『と、父様!?』 『あれ、もうそんな時間?』
楽しい時間と言うのはあっと言う間で、遊来とカードの組み合わせを見たりしていたら父様がやってきた。 と言うか、僕たち(クリス兄様は特に!)何もせずに一日を過ごしてしまったんだけど。
『いいんだよ。今日は楽しく過ごせたかい?』
歩み寄りすみませんと謝りながら様子を伺えば、父様はそう言って笑った。 父様の笑顔は幾分も優しくて、もしかしてああやって二人で揉めたのも実は演技で親なんか気にせず僕ら子供だけで楽しく休息を取れるようにって配慮だったりして。
『おやおやミハエルにはバレてしまったかい』 『…!やっぱり!父様…っ』 『いや…そんなボロボロな姿で言われてもな…』
呆れたようにトーマス兄様が言った。 どうやら二人は今までデュエルしていたらしい。…どっちが勝ったのか…気になるのは僕だけなんだろうか。
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『あー今日は楽しかったなぁー』 『それは良かったな』
クリス達と別れ、遊来を家まで送っていく。 オービタル7で行けば直ぐなのだが、ハルトが「オービタルは父さんの手伝いで今忙しいからだめ」と頑なに言うから仕方なく徒歩でだ。 遊来は今日の事を楽しそうに話している。
『ミハエルと一緒にデッキ強化したし、次カイトとデュエルするときは絶対負けないよ!』 『それは楽しみだな』 『ね、アストラル!』 『…?』 『あれ?アストラル?』
ああ、そうだな。…いつもの返答はなかった。 遊来と一緒にいつも奴が浮いている辺りを見回すが、姿が見えない。 また鍵の中かと遊来が鍵に触れて見る。 夕日に照らされキラリと鍵が光った。
『久々だなぁ…最近はずっと出てたの、にっ!?』 『遊来っ!』
ガクンと遊来が前のめりになる。 鍵ばかり見ているからだ! とっさに伸ばした腕を腹に回し、倒れるのを阻止する。軽い遊来は力の分引き寄せられて、半ば抱きかかえる形となった。
『た、助かったよカイトー!』 『前を見ろバカ!』 『む、ぅ…ごめんなさい…』
そうだ、今回は十中八九遊来が悪い。 俺が居なかったら確実に転んでいただろう。 少しは落ち着きを持てとため息を吐いたら、振り向いた遊来と鼻が掠った。 あれ、なんだ。 思ったより近、っ、
『か、かかかかかいとっも、だいじょぶ、だからっ』 『あ、ああそうだなっ』 『これからはきをつけますっ』 『そうしてくれ、』
離れてほっと一息吐く。 遊来は耳まで真っ赤にしている。 …かく言う俺もそうなのかもしれない。 (オービタルとアストラルが居なくて良かった)
『いくぞ、』 『う、うん…』
再び遊来の家へと向けて歩き出す。 …今度は少し距離を空けて。 恥ずかしいらしい(いや俺も恥ずかしいが)遊来はつかつかと歩いている。
『(唇、当たりそうだった…)』 『…遊来、』 『(カイトの目、すっごく綺麗だったな…)』 『遊来、オイ』 『(どうしよう、まともに顔見れないかも…っ)』 『遊来っ前っ!』 『え?ぎゃっ』
ゴツン。 嫌な音がした。 遊来は見えていなかったのだろうか、前には電柱がありそれに向かって一直線。 俺の声も届かず、ぶつかってしまった。
『だ、大丈夫か?』 『いっひゃい…』 『…』 『あ、今カイト笑ったでしょ!?』 『笑ってない』 『嘘だ!』
頬を膨らませる遊来にぶつかったのは自業自得だろうと言う。 笑いは堪えているつもりだが、もしかしたら口がにやついているかもしれない。 俺は笑いを誤魔化すよう、涙目の彼女の頭をハルトにしてやるみたいに撫でた。
『おでこ、赤くなってるな…』 『これくらいへーきだよ!』 『そうか、遊来は強いな』 『…ちょっとカイト?私はハルトじゃないんだけど?』
心配をしたんだが、ちょっと子供扱いし過ぎじゃないですかね?と少しご立腹な様子。 クリスには膝の上に抱かれたりと子供扱いされても平然と笑っているのに俺はダメなのか。 なんだか境が良く分からないが。
『子供じゃないならちゃんと前を見て歩け』 『…子供じゃない訳じゃないけど前は見て歩きますぅー』 『…?』
何処で機嫌を損ねたのかが皆目検討もつかない。遊来は背を向け歩き始める。 さらさらな金色の髪が動きに合わせて揺れていたが、不意に動きが止まった。 遊来がちらりとこちらを見る。
『子供じゃないけど、』 『?』 『子供じゃない訳じゃなくて…』 『日本語を話せ』 『…こ、転ばないように手繋いでもいいよ』
訳がわからない。 何で俺が…。
『カイト、顔真っ赤だよ?』 『うるさい』
伸ばされた手を引いて歩き出す。 顔が赤いのは夕焼けの所為だ。
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──────────── か、かかかかカイトさんがデレすぎましたね!ごめんなさい! 迷走してるって、自覚してるんだからねっ(
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