ふたりぼっちのクリスマス





『クリスマス?』
『そうだよ、未来には無いの?クリスマス』
『無いって言うか…』


フェイはしどろもどろに、言葉を濁した。


『そーゆーの、した事がないんだ…ボク…』
『フェイ…?』


未来ではあんまりしないんだろうかと疑問に思って、じゃぁ、と俯くフェイに私は笑いかける。



『やらない?二人で!』
『えっ』
『クリスマスパーティー!』


フェイの瞳が、揺れた。









『おじゃまします…』
『どーぞー!』

24日、名前の家へとやってきた。
玄関に出てきた私服の彼女にドキリとして。
ちゃんとお泊まりグッズ持ってきた?と聞かれて更に心臓が跳ねる。
ボクは今日、名前と二人きりで名前の家にお泊まりなんだと自覚したら顔が熱くなって焦った。

『フェイ?』
『な、なんでもない…あ、えっと名前一人?』
『昨日も言った通り、ママは仕事で居ないの。』


だから二人だけだよと手を握られた。
名前は母親と二人暮らしで、母親は殆ど仕事で居ないらしい。

『ほら、早く上がって!』
『うん、お邪魔します…』

握られた手を引かれ部屋の中へ。
リビングには小さな樅(もみ)の木を模した樹が立っていた。


『これ、』
『小さい頃にママにオネダリして買ってもらったツリーなの』
『へぇ…』

家族と過ごすクリスマスか…楽しかったんだろうなとボクが名前を見ると、彼女は飾りが入った箱を出して苦笑い。

『フェイ、飾り付けしようよ』
『うん、』
『誰かと飾り付けするの、初めてなんだ』
『…え?』


暖かい家族団欒のクリスマスのイメージは瞬時に消えて、一人でぽつりと夜を過ごす彼女の姿が浮かぶ。
聞いてはいけないと思いながらも、小さなツリーに飾りを付けながら何で?って聞いてみた。

『私、パパ居ないでしょう?だから、ママが頑張って働いてるの』
『…そ、か…』
『うん、だから、私がわがまま言っちゃ駄目なの』
『名前…』

それにね。
天使の飾りを枝に下げた名前は、にっこりボクに微笑んで。

『今年はフェイが居るから』
『え、』
『だから、幸せ』

ボクはずっと、ひとりだったから。
名前はママが居るから平気だと思ってた。
誰かが居るならそれだけで幸せだって。

けれど、居ても一緒に過ごせないなら…それは居ないのと同じなのかもしれない。
特別な日は、特につらいんじゃないかなあ。


『できたら、さ』
『うん、』
『来年も、名前と過ごしたいな…』

恥ずかしくて俯いたら、名前がうんと頷いたのが分かった。


『これからも、ずっと…』


大好きな君と。






end





もうツリーとか何年も出してないなぁと思って。なんか甘くも辛くも無いお話になってしまいました…スミマセン(汗
ルカ様リクエストありがとうございました…\(^o^)/


犬猫

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