どう突っ込んだらいいか分からないな。
(役回り的に不本意ながら)母丸なんて言われながらも、世話焼きな俺はどうしても気になってしまって。
『アレ、良いのかな…』 『風丸、気にしすぎだ』 『けどさ…』
飛鷹に、無理矢理服を剥かれ担ぎ上げられ風呂に入ってきた虎丸は、拗ねた表情でこう言った。
『俺、飛鷹さん達の裸なんか見たくないですー!』 『タオル巻いてるだろーが、』 『そーじゃなくて、俺は名前さんの素敵な肢体を拝みたいんです!』
どやっ! 目をきらきらさせながら、虎丸は宣言した。
『良いのか?』 『…問題アリ過ぎてどう突っ込んだら良いのか分からないな』 『…だよな』
て、ゆーか。 言ってる意味分かってるのか?と。 風呂の隅で俺と豪炎寺がそんな話をしているなんて、虎丸は知らない。
名前さんはもちろん知らない。
× × × × × ×
『名前さーんっ!』 『わ、』
お風呂を上がって食堂に居る名前さんの後ろ姿に抱きつくと、驚いた声がしたけどそれは名前さんのものじゃなくて。 名前さんの前にいる人物を見る。 銀色の長い髪…佐久間さんが居た。
『ごめん、次郎ちゃん痛くなかった?』 『大丈夫です』
同じくお風呂上がりのその人は、どうやら名前さんに髪を拭いて貰っているらしく。
『いーなー髪キレイで』 『そうですか?』 『肌もキレイだし』 『フツーですよ』 『触って良い?』 『名前さんならどこでもオッケ…』 『だ、だめ!』
佐久間さんの手が、名前さんの手を掴み喉元へ。 俺は咄嗟に阻止してしまった。
『虎丸?』 『駄目!駄目です!セクハラですよ佐久間さん!』 『いや、触ってるの私だし…』 『てゆーか、合意の上だから』
にっ、と意地悪く笑う佐久間さん。 く、悔しい。 じわり。 勝てそうに無い言い合いに涙を浮かべたら、名前さんは苦笑いで。
『虎丸ったら、髪濡れてるじゃない』
ほら、タオル貸して、と。 優しい掌がタオル越しに頭を撫でた。
『水もしたたる何とやらとは言うけど、ご飯前なんだからちゃんと拭かなきゃ駄目よ』 『…俺、その何とやらが聞きたいな』 『…』
名前さんは黙り、わしわしと頭を拭いてタオルを取った。 目を開くと、そこにはニコリと微笑む名前さんが居て。
『ほら、カッコイイ虎丸君の出来上がり』
って、
『あ、ひ、い、今、いま!』 『ん?』
ニコリと笑う名前さん。 と、とんだ小悪魔だこの人! 今、俺…かっこいいって!?
『と、とうとう!俺の嫁になる決心をしてくれたんですね!!』 『そこまで話飛ぶのか』 『佐久間さん悔しいからって文句言わないでください!』 『言ってないだろ』 『名前さん!二人で素敵な家庭を…』 『名前ー、俺のワックス知らね?』 『あ、私の鞄の中だ』 『借りパクすんな』 『ごめんごめん、勝手に取って良いからさ』 『おー、』
……ぱたり。 顔だけ出した飛鷹さんがそれだけ会話して出て行った。
『ごめん虎丸、二人でなにって?』
優しく微笑む名前さん。 隣に座る佐久間さんが、ぷっと吹き出して笑った。
◆
食事後、片づけをする名前さんの背中にずーっと引っ付いてたら、手伝っていたキャプテンが俺を見て訊ねる。
『虎丸、何してるんだ?』 『…ほっといてあげて、円堂君』
名前さんがクスクス笑った。
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何だあの会話はぁぁあ!? って思った宇都宮さん(12)笑 ちょっと悔しかったんだ。
20111101
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