episode:08
本当に限界が来たときは…。
『監督!』 『どうした、神童』 『あの!名前が足を怪我したみたいで…』
ミーティング室で、俺はさっきのことを監督に話した。 病院に行くべきだと伝えたら監督は気付いていたらしく、彼女の兄に連絡をしたから大丈夫だと一言告げ前に立つ。
『今から、名前について少し話したいと思う』
監督の表情は何時になく真剣だった。
『皆も今日見たと思うが、名前は全てにおいて身体能力が高い』 『剣城の化身シュートを蹴り返す程にな』
鬼道コーチの言葉に、ピクリと反応した剣城は悔しそうにした。 それはそうか。 年が上とはいえ、剣城は元シード。 普通の女の子に返されてしまっては、憤りを感じずにはいられないだろう。
『アイツは、もしかして…シード、なんですか?』 『シード、名前が?』
剣城の言葉に皆がどよめく。 確かに、彼女の強さは異常だ。 でも態度はとてもそういう風には見えなかった…。
『監督…答えて下さい』 『名前はシードじゃない』 『俺達も名前の事は小さい頃から知っているからな…シードでは無い』 『無い、が…』 『実はもっと厄介かもしれない…』
厄介、 その言葉に、ゾクリと背中に悪寒が走った。 何なんだろう、この感じは。
『詳しいことは省くが。10年と少し前、人間を強化するプロジェクトが極秘に行われていた』 『地球に"あるもの"が現れ、"それ"を使うと人間が持っている以上の力が得られると分かったからだ』 『"それ"で人間の身体能力を高め、その人間を使って世界征服を目論むヤツが居た』 『世界征服、って…』 『話大きすぎっしょ〜、』
速水が後ずさり、浜野が苦笑いした。 流石に話が大きすぎて、実感がわかない。 しかし剣城がいや、と口を開く。
『今のサッカー界は"フィフスセクター"に支配されてるんですよ』 『その強化人間が"シード"って考えれば…確かに、その計画も不可能じゃないかもしれないな』
隣にいた霧野が剣城に続いた。 確かに、見方を変えればそうとは言い切れない。 俺達は監督の次の言葉を待った。
『その計画は、なんとか阻止され失敗に終わった』 『首謀者は捕まり、その人間達も"普通"に戻ったんだ』
だが、と二人は目を伏せる。 俺は嫌な汗が伝うのが分かった。
『その何年か後、異常な力を持つ女の子が見つかる』 『それが名前だ。』 『それって、』 『いつからその力を与えられたのかは分からない…』 『他とは違う方法で強化された彼女は、力を失うことは無く誰よりも強く、何よりも強くなった…』 『名前は幼いながら、"完璧なソルジャー"になっていたんだ』
あたりが静まり返った。 皆、声が出ないんだろう。 監督はとても悔いている瞳だった。 その人達を救ったのが監督達なのかは定かではないけれど、コーチはいつもと変わらず話を続けた。
『完璧とは言ったが…見た通り名前は申し分ない程の力を持っている。しかし、完璧な人間など、作ることは不可能なんだ』 『名前の足の鬱血をお前達も見ただろ』 『…そうか、』 『あぁ、あれは剣城のボールを打ち返した時に出来た痣だ』
剣城は監督を見据える。 なるほど、と霧野が口を開いた。
『名前の身体が追いついてない、ってことですか』 『それもあるが…少し足りないな』
どうも"完璧"と言う言葉が引っかかる。 何をもってして、そのソルジャーは"完璧"なんだろうか。
『名前は常に100%の力でプレイする事ができる』
次に答えたのはコーチでは無く監督だった。
『常に、100%?』 『分かってると思うが、気持ちの問題じゃない。身体能力の話だ』 『人間は自身の意志とは関係なく、常に制御がかかっている。全て全力で力を発揮していたら身体は耐えきれないからだ』 『そ、れって…』
つまり、やっぱり。 さっきの嫌な汗の意味が分かった。 名前は、彼女は。
『それってつまり、名前がプレイする度、彼女は自分の身体を壊してるってことですか!?』 『…そうだ』
動く度、骨は筋肉は筋は悲鳴を上げている。 そんな事を続けていたら、その先は。
『本当に限界が来たとき…彼女はサッカーは疎か身体が動くかも、分からない』
静まり返った室内は。 しばらく誰も言葉を発することはなかった。
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補足←←←
つまりはエイリア学園生き残り、みたいな。 幼いながら、エイリア石の影響を一番永く一番強く受けてしまったのがヒロイン。 自身が強化されている挙げ句に、強化人間より強くなったガイアよりも強くなってしまったので、そりゃもう強いです(説明ェ…) ただし、細胞やらなんやら犠牲になります。 でも壊れた細胞も、長年働いていたエイリア石の影響で回復します。 だから痛くないし、怪我しても回復は早いです。今のところ。
…と、そんな設定。
とりあえずヒロインの説明の回終わりー←
エイリア石とかソルジャーとかだいぶ昔の事なんで忘れました← 説明適当ですサーセン
(゚∀゚)←オイ
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