手紙


この間、借りた本を返すために図書室の道を歩いている。今日は暖かいから八と狼と裏山に行って遊ぼうかな。

「鈴くん!」

後ろから呼ばれる声がして振り向くと天女様が文を持って駆け寄ってきた。

「天女様。こんにちは。」
「お手紙でーす!」
「ありがとうございます。」

笑顔で文を渡されてつられて笑い受け取り宛名を見るとお母様からだった。何か有ったのかと思い文を広げると子供が出来たと描いてあった。内容に驚き目を丸くすると天女様が首を傾げているのが目に入った。

「どうしたの?」
「いや、驚きまして。」
「悲しい知らせ?」
「いや、嬉しい方です。」

嬉しそうに笑うと一緒になって笑ってくれた。天女様は何枚か文を抱えていて今日は事務の仕事なんだと思った。

「鈴くん、雷蔵くんはどこにいるか知ってる?」
「図書室だと思います。今から自分行くので渡しましょうか?」

持っていた文を懐に仕舞うと本を見せて首を傾げた。天女様は首を振ると自分のことを見つめた。

「私の頼まれた仕事だから。」
「じゃあ、一緒に行きましょう。」

団子の会の時に分かったことだけど忍者ではないと思う。探りを入れたけど全くそれらしいことも返ってこなかった。よく考えたらブレザー着て空から落ちてきた。平成からトリップしてきたのかなって。頭おかしいかもしれないけど、自分自身も現代の記憶が有って転生してるんだから可能性が無いわけじゃない。勝手に解釈をしたけど警戒心は解いてない。

「天女様。ここが図書室です。」
「ありがとう。」

図書室に入ると机に向かって本の整理をしている雷蔵を見つけた。

「雷蔵。」
「雷蔵くん。お手紙です。」
「鈴。えっ天女様!」

天女様を見た瞬間頬を染めて嬉しそうに笑う雷蔵。文を渡したあと自分達に手を振り急ぎ足で図書室を出て行った。

「かわいいなあ…。」

ぼーっとしながら出て行った入口を見つめて小さな声で溜め息混じりに呟いた。雷蔵の正面に腰を下ろして返却用紙に名前を書いた。

「雷蔵。天女様のこと好きなの?」
「えっ。」

あからさまにわかる態度に用紙から目を離さずに質問すると裏返った声で返事がきて驚き雷蔵を見ると顔が真っ赤になっていた。

「えっ、違う!ただかわいいなあって…。」

目を泳がせながら否定するように手を振り自分が書いていた返却用紙を引ったくり適当に何度も判子を押している。動揺を隠しきれてないよ…

「まあ…色々頑張って。」

本を雷蔵に渡すと図書室から出て廊下を歩いた。天女様に恋か…会話に差が出そうで大変だろうな。でも前にも天女様居たんだっけ。その人はどうなったのだろう。


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