ある雨の日のシンフォニー


天気予報は晴れだったし、家を出た時は確かに晴天だった。
なのに、どうして。買い物が終わって歩いていたら、突然の土砂降りに襲われた。
もちろん傘なんか持っていない俺は、慌てて民家の軒下に逃げ込み、空を見上げる事しか出来やしない。
「はぁ、ついてねぇ…」
空を見上げながら、出るのは溜息ばかり。
俺、悪いことしただろうか。テレビの星座占いは一番だったし、今日の買い物だって親に頼まれたお使いだ。
悪い事なんかしていないのに……。
あぁ、占いで言ってたっけ。ラッキーアイテムは傘だって。占いを信じなかったのが悪かったのか。

「傘、持ってないの?」
溜息を吐きながら恨めしそうに空を眺めていた俺に、突然知らない男の人が声を掛けてきた。見りゃ分かるだろ、なんて思いながら頷くと、そいつは俺に傘を差し出してくる。
「良かったら一緒に入る?進行方向が同じなら、だけど。どっちに行くの?」
「あっち、です」
「俺も同じ方向だ、良かった。さぁ、傘に入って?送ってあげるよ」
そう言って、男はにっこりと笑う。その笑顔に何故か頬が熱くなって、気付かれないように俺は慌てて下を向いた。

突然の雨に落ち込んでいた俺だったけど、たまには雨の日も良いかもしれない、なんて。さっきまで見ず知らずだった男と、肩が触れる距離で歩きながら思う。
「キミ、名前は何て言うの?」
「俺は……」
だってほら、名前も知らない見知らぬ他人が、知り合いになれた。

当てにならない天気予報も、たまには良いもんだな。あの天気予報が無かったら、占いだって外れただろうし。
『……座のラッキーアイテムは傘。今日は素敵な出会いがあるでしょう』
占いを告げるアナウンサーの明るい声が、ふいに脳裏を通り過ぎた。



★あとがき★
登場人物の名前はおろか、大まかな設定すら書いていないショートショートです。
子供、学生、大人。お好きなように妄想して補完して下さい。


2009/11/11



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