海辺の街のお伽話A


「変な物もらっちゃったなぁ」
科学の発達したこの世の中で、魔力なんて非科学的なものを信じられるわけが無い。そう思ってはいても、何故かゴミ箱に捨てる事も出来ずに公園を後にした。
「あれ、直人じゃん。こんなとこで会うなんて奇遇だな」
突然声を掛けられ振り向くと、同じクラスの東條秀明(とうじょう ひであき)が居た。
「秀明こそ、こんな所で何してんだよ?」
確か秀明の家はここから遠かったよな、なんて考え首をひねる。
「何って、今から塾に……お前に会いに来たに決まってんじゃねえか」
「……は?」
秀明は、そんな冗談を言うキャラだったろうか。と言うか、塾だと確かに言いかけていたではないか。何を阿呆な事を言ってんだと笑って流そうと試みた直人だったが、すぐに異常な事態に気付く事になる。
真面目で余り冗談の通じないあの秀明が、公衆の面前で直人を抱き締めたのだ。
「おま…なっ何?」
驚き必死にもがく直人にも動じず、秀明の口からは耳を疑うような甘い台詞が飛びだした。
「今まで気付かなかったのが嘘みたいだ。俺はお前を愛している」
「はぁあ?」
目を白黒させる直人を尻目に、秀明の口からは歯の浮くような台詞が次々と溢れ出る。それはさながら、愛を歌う小鳥のようだった。

「ひ…酷い目にあった……」
追ってくる秀明をなんとか撒いて自宅へと戻った直人は、玄関の扉を閉じると疲れ果てて座り込んだ。
あの後、秀明の他にも沢山の男が寄ってきたのだ。道すがら肩のぶつかってしまったサラリーマンに、彼女とデート中の大学生くらいの男。色んな男が愛を囁いてきて、直人は必死の形相で家まで逃げ帰ったのだった。
「やっぱこれって、コイツのせいだよな」
思い当たることは唯ひとつ、ペンダントだ。本当に、魔力が宿っているに違いない。でも。
「何で男ばっかなんだよ!」
八つ当たりのように壁に拳をぶつけた時、タイミングを図ったかのように携帯が鳴った。



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