出会い

ガタンガタンとリズムを刻むように上下する電車に揺らされ、心地良い電車の音を聴きながら横を向くと、車窓から見える景色は次々に流れていき、雪化粧を纏った風景が眼下に広がる。
雪があまり降らない地域に住んでいる事もあり、俺は電車の窓越しに食い入るように外を眺めていた。

「雪、好きなんですか?」
不意に声を掛けられ視線を前に向けると、向かいの席に座っていた男性がにこやかな表情でこちらを見ている。
「好きっていうか、綺麗ですよね。俺、今までは雪が降らない地域に住んでいたから……」
「今まではって事は、これからは違うんですか?」
「そうなんです。引っ越すことになって」
大学に合格し、この春から俺は親元を離れて一人暮らしを始める。今日は下見を兼ねて、冬休みを利用し一人旅に出掛けている最中なのだ。
そう告げると、彼は笑顔で大学合格を祝ってくれた。何だかその笑顔がくすぐったくて、自然と頬が熱くなる。
胸も少し高鳴った気がして、小さくお礼を言うと誤魔化すように俺は車窓に視線を戻した。

暫くすると、自分が降りる駅へと到着するアナウンスが流れた。
「新生活、頑張って下さいね。それじゃ、俺はここで降りるんで」
男性の言葉に、また胸がドキンと鳴る。向かいの席に座っただけじゃなく同じ駅で降りるなんて、偶然にしても出来過ぎな気がして。
「俺もここで降りるんです」
彼の後に続くように電車から降りると、彼も驚いたように目を見開いた。
「もしかして、合格した大学って……」
そう問われた大学名は、春から俺が通う学校の名前。肯定の意味で頷くと、彼は意味深な表情で微笑んで「それじゃあ、またね」と手を振って去っていった。

あれから二ヶ月が経ち、大学に入学して一週間が経過した。
「久し振り。新生活は順調?」
懐かしい声に振り向くと、いつかの電車で出会った彼が立っていて。
「え……?」
「またねって言ったでしょ?僕はここの二年なんだ」
そう言って笑う彼の上に、あの日の雪のように綺麗な桜の花びらが舞った。
まるで二人の再会を祝福するかのように。


★あとがき★
この話は、鱗ボーイズという小説投稿サイトの第52回お題「電車」に投稿した作品です。
お題に沿って書くのって楽しい(*´ω`)



2010/1/4




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