プレゼントB

「また明日な」
ぎゅっと智久の身体に抱きついて呟くと、智久は嬉しそうに笑いながら俺の身体を抱き返してくれた。
「あぁ、また明日な」
返事と共に俺の頬に暖かいものが軽く触れ、キスされたのだと気付く。冷たい夜風にさらされ冷えていた俺の頬は、一瞬で熱くなった。
智久と別れ部屋に入った後も、俺は暫くの間ぼんやりしていた。中学生の時から好きだった相手と両想いになれたのだという事実は夢のようで、それでも智久の唇に触れられた熱をもった頬が、これは夢ではないのだと告げていた。
静かだった俺の部屋に、突然音が鳴り響く。慌てて携帯を手に取ると、智久からのメール着信を知らせるメッセージが目に飛び込む。
「明日一緒に遊びに行かねぇ?」
メールに書かれていたのは、たったそれだけ。それだけだったけれど、俺はこれ以上ないほど幸せな気持ちになれた。
明日は土曜日で、学校は休み。休日に智久と会えるのだと思うと自然に顔が緩み、嬉しさににやけながらメールの返事を打った。
明日は智久と会える。これは俗に言うデート、というやつなんだろうか。
デートなのかもしれないと思ったら、明日着る服が気になりはじめて、俺は女の子のように夜中まで一人ファッションショーを繰り広げた。


「昭彦、智久くんが来てるわよー」
母親の声に起こされて時計を見ると、既に10時を指していて。智久との約束の時間まで眠り呆けていたのだと気付く。
なんて馬鹿なんだ、俺は。デートに浮かれて夜更かししたせいで、寝過ごしてしまったらしい。慌てて昨夜選んでおいた服に着替えた俺は、やっぱりいつも通りの寝癖頭で智久の元へ向かった。
「お前なぁ、今日くらいは髪綺麗にしとけよ」
苦笑いを浮かべながらも、しょうがねえ奴だな、なんて言いながら俺の髪を梳かしてくれる。気持ちよさに目を閉じて委ねていたら、そっと唇に何かが重なった。
「……っ?」
何事かと目を開けると、すぐ近くに智久の顔が見えて、キスされたのだと理解した。
その後、一緒に映画を観たり食事に行ったり、友達だった時と変わらない過ごし方をしたけれど、俺には忘れられない特別な日になった。
智久と恋人になってからはどんな些細なことでも俺の胸を高鳴らせ、幸せな気持ちが積み重なっていくみたいだ。
これが永遠に続けばいいのに。俺は心から、そう願っていた。
でも、そう願っていたのは俺だけで、智久は違ったのだろうか……。


智久と付き合いはじめて二週間余りが経ったある日。俺は担任に呼ばれて、放課後の教室に智久を待たせていた。
早く智久のところへ行かなければと、廊下を早足で歩いて教室の前まで来ると、中から話し声が聞こえてきた。
「智久はクリスマスの予定、何かあんの?」
どうやら、教室には智久以外にも誰かが居るみたいだ。扉を開こうとしていた俺は、智久がどう返事をするのかが気になって、扉から手を離した。
「クリスマスかぁ。今んとこ予定ないけど」
智久の返事が聞こえた。クリスマスは俺と過ごしてくれないのだろうかと、少し傷付く。
「予定ないんならさ、合コン行かねぇ?前にお前が可愛いっていってた理彩ちゃんも呼んでるからさぁ」
「何なに、智久ってば理彩ちゃんが好きだったのか?」
クラスメートの囃立てる声が聞こえて、智久が答えるより早く扉を開いた。



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