少年時代‐玉川編‐@

もうずっと、本当に後悔している事がある。十年前、好きでもない子と興味本位で付き合ってしまった事だ。
あの頃の俺は、友情と愛情の違いも分からないようなガキだったから。それが原因で、俺にとって一番大切だった人は俺の元から去ってしまった。


「俺、彼女が出来た」
高校生だった俺は、自慢するように親友の荒木にそう告げた。悔しがるだろうか、それとも「良かったな」と喜んでくれるだろうか。そんな事を、お気軽に考えていたっけ。
結果は、予想だにしないものだった。一番の親友だった荒木は、その日を境に俺から離れてしまった。
「荒木、どうしたんだよ。そうそう!お前の好きなアーティストがさぁ」
どうにか荒木の気を惹こうと、荒木の好きなあらゆる話題を振ってみたりもしたけれど、あいつは話を碌に聞くこともなく俺を遠ざけていった。
そうなってから気付いた。俺は荒木が好きだったのだと。いつも一人だった荒木にちょっかいを出したのも、あいつと何度もプリクラを撮りにいったのも。その全てが、あいつを好きだと想う気持ちがそうさせていたのだと、荒木が離れてから気付いた。
それからの俺は、どうすれば荒木が元のように戻ってくれるかばかりを考えていて、生まれて初めて出来た彼女には振られてしまった。
「……玉川くんってさ、私のこと好きじゃないでしょ?」
振られた時に言われた言葉が胸を抉る。ガキで馬鹿だった俺は、この女の子の心を傷付けた。こんなに馬鹿だから、荒木は俺から離れていったのだろうか……。
荒木との仲を修復出来ないまま、俺たちは高校を卒業した。

あいつは、今頃どうしているだろうか。もう三十路手前だ、結婚して子供だって居るかもしれない。
いつまでも荒木の影ばかりを追い続けている俺を見たら、あいつは十年前のように笑って「お前は本当、馬鹿だよな」なんて、軽口を叩いてくれるだろうか。
……バカバカしい。荒木と会える可能性などほとんど無いというのに、俺はいつまであいつの幻影に縋っているんだ……。
ギリッと奥歯を噛み締めて、胸の痛みを誤魔化す。そうしないと、こんな往来のど真ん中で泣いてしまいそうで。
なんとか堪えて前を向いた俺は、情けなく口をぽかんと開けて目の前を凝視した。



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