星に願いを

『ねぇ、おかあさん。健斗お兄ちゃんと、また会えるよね?』
『そうね、流れ星にお願いしてみなさい。流れ星ならお願いを聞いてくれるかもしれないわ』
『本当?僕、頑張って毎日お願いする!』


……懐かしい夢を見た。あれは、いつの頃だったか。
確か俺が小学校低学年くらいの時、大好きだった近所のお兄ちゃんが引っ越した時の夢だ。
いつも俺と遊んでくれていた健斗お兄ちゃんは、俺より五つも年上で。中学生だというのに、ガキんちょだった俺の相手をよくしてくれていて、俺はとても彼に懐いていた。
あれは、初恋だったのかもしれない。彼が居なくなってから暫くの間、幼心に胸が痛くて、俺は夜を泣いて過ごしていたのだから。

「懐かしいな…」
窓の外を見てみると、まだ闇が辺りを覆っている。
懐かしい夢を見てしまった俺は、毎晩のように流れ星を探していたあの頃のように、真夜中の空に視線を移した。

「うわぁ…」
夜空を眺めた俺は、余りの光景に言葉を失った。
あの頃いくら探しても見つける事が出来なかった流星が、夜空に溢れているのだ。

『流れ星ならお願いを聞いてくれるかもしれないわ』
不意に、幼かった俺を慰めるために言った母親の言葉が頭を過ぎる。
……願い事、掛けてみるか。
頭上を流れる幾千の星なら願いを叶えてくれるかもしれないと、俺はガキみたいにワクワクしながら手を合わせた。

健斗お兄ちゃんが、今も元気で幸せで居ますように。
会いたいなんて願わない。ただ、初恋だった貴方が、今もどこかで幸せでありますよう。
……そして、隣りで気持ち良さそうに眠っている俺の恋人が、一生俺のそばに居てくれますように。

★あとがき★
今日の午前二時、ペルセウス座流星群のピークを迎えます。
って事で、ペルセウス座流星群に因んで超短編を書いてみました。



2009/8/13




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