求愛以上、告白未満A

色鮮やかな大輪の花火が夜空を彩る海辺の堤防に腰掛けた靖貴は、花火を見上げながら電車での一件を考えていた。
花火大会に向かう電車の中での正和は明らかに様子がおかしくて、あの電車での彼の表情や体温がぐるぐると思考を支配してしまっているのだ。

花火に集中出来ないでいる靖貴は、隣りに腰掛けている正和をチラッと盗み見た。すると、花火の光に照らされた正和の横顔は何とも言えず綺麗で、思わず息を飲む。

「……綺麗やね…」
思わず出た本音に慌てて口を噤むも、その言葉が耳に入った正和は笑顔で靖貴の方に顔を向けた。
「本当綺麗だよな」
そう言って花火を指差す正和の表情は花火なんかよりも何倍も綺麗で、無意識のうちに靖貴は正和の頬に指を這わした。

「めっちゃ綺麗や…」
「えっ、タカ…?」
訳も分からずキョトンとする正和に靖貴の顔が近付いて、ゆっくりと唇が重なり合う。

「ん…っ…!」
驚きに目を見開く正和を尻目に、更に深く唇を重ねて。正和の唇は思いの外柔らかくて、一度味わってしまったその甘さは離し難い。
「…んぅ…ふ…」
身じろく正和の身体をがっしりと抱き寄せると、唇を割いて舌を絡ませてみる。
すると、ビクッと身体を震わせた正和は、しかし恐る恐る舌を伸ばして答えてくれて。何も言葉を交わさないまま、二人は何度も何度も舌を絡め合った。

(まぁちゃん、好きやよ…)
(……好きだ、タカ…)

ゆっくりと唇を離した時には互いに息が上がっていて、上気し潤んだ瞳で見つめ合って。
それでも未だ気持ちを伝えられないまま無言で帰路に着いた二人の指は、強く絡まり合っていた。
繋いだ指から気持ちを伝えるかのように、強く深く…。




2009/8/5





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