ほんの少しの幸せ

暑さが和らぎ、朝夕には肌寒さすら感じ始めた秋の気配。
この季節が、俺は好きだ。

「タカ、寒い」
ボソッと呟いて、雑誌を読んでいるタカに近寄る。すると、タカは「しゃあないなぁ」なんて言いながらも嬉しそうに鼻の下を伸ばして、俺を抱きよせるんだ。
「ん、あったかい」
満足して眠る体勢になった俺の頭を、タカは雑誌を読むのをやめて撫でてくれる。

いつもは照れくさくて、素直に甘えたりするのが難しくて。気が付いたら、つい可愛げのない言葉ばかり言ってしまう俺だけど。これから春になるまでの数カ月は、俺が素直に甘えることのできる季節だ。

「寒い」
「凍える」

そんな簡単な言葉の魔法が、俺がタカに甘えさせてくれるのだ。
だから俺は、秋が好きだ。
だから俺は、冬が好きだ。
恋人の暖かさを感じる事の出来る、これからの季節が大好きだ。
でも、春も大好き。夏も大好き。
秋冬になると感じられる素直に甘えることができる幸せも、春と夏があればこそ。暑い季節があったからこそ、寒い季節に恋人の暖かさが分かるのだ。

だから俺は、タカと過ごす毎日が、とてもとても幸せなのだ。


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