ゆく年くる年

年の瀬も押し迫ったある日、正和は靖貴の家へと来ていた。
「まぁくん、悪いなぁ。ほんま、うちのアホが迷惑かけてしもて……」
「いえ、大丈夫ですよ。気にしないでください」
申し訳なさそうに謝る靖貴の母親に笑顔で応えると、彼女は再度お礼を告げて忙しなく仕事へと向かった。
そう、今日は遊ぶために来たのでは無いのだ。今日、靖貴に会いに来た理由。それは……。

「これは捨てていいだろ?」
「いかんいかん!それは大事なモンなんよ、ゴミにしたらいかんッ」
「さすがにコレはゴミだろ」
「それも駄目やて!」
もうすぐ正月だと言うのに全く片付かない。正和は、そんな靖貴の部屋の大掃除を手伝いに来ているのだが、どう見てもガラクタにしか見えない物も捨てられない靖貴に、正和は苛立ちを募らせる。
「お前、いい加減にしろよ。砂場セットを大事にしてる高校生なんて聞いたこと無いぞ」
「そんなん言われても、俺の宝物やし!捨てるんなんか許さんよ」
砂場セットや折り紙の鶴を宝物と言う男。そんな奴が恋人だなんて……と頭を抱える正和に、靖貴が言った。
「この鶴は初めてまぁちゃんが俺にくれたプレゼントやし、砂場セットはまぁちゃんと出会った時に俺が持ってた思い出の品なんやけんね」
「……は?」
「こっちの落書きは、小学生の時にまぁちゃんが書いてくれた俺の似顔絵やし、こっちのは……」
もしかして、このガラクタのように見える品々は全て、俺と何らかの関わりがある物だというのだろうか。靖貴は、そんなに昔から俺を大切に想っていてくれたのか?
そう思った途端、正和の胸が熱くなった。大事にされているのだと、胸いっぱいに幸せを噛み締めて。


ガラクタなんて言って悪かったよ。捨てるんじゃなく、これらを綺麗に片付けたらさ。そしたら二人で初詣に行こうか。
来年一年間も、ずっとずっと一緒に居れるように、二人で神様にお願いに行こう。
「タカ、愛してる」
「俺も愛しとるよ。って、いきなりどしたん?」
訳が分からずキョトンとする靖貴にキスをして、正和は幸せそうに笑った。
今年一年、本当にありがとう。来年もよろしくな、タカ。



★あとがき★
2009年最後の更新はタカ×まあです。
皆さま、来年も宜しくお願いいたします。よいお年を!


2009/12/31




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