求愛以上、告白未満F


靖貴の胸で散々泣いて思い知った。この男は、どこまでも優しいのだと。
「まぁちゃん、落ち着いた?」
ずっと背中を撫でてくれていた靖貴に声を掛けられて、正和は小さく頷く。
「……ありがとう、もう平気だから…」
だから、早く離して欲しい。早く離れなければ、もっと迷惑を掛けてしまう。もしかしたら脈があるんじゃないか、なんて…ありもしない期待をしてしまうから…。
「明日からも、今まで通り仲良くしてくれよな?」
無理矢理笑顔を貼り付けた正和は、靖貴から離れるように腰を上げ立ち上がった。

「……今まで通りなんか無理やよ、まぁちゃん…」
小さく呟くように発せられた靖貴の声が、ズキンと重く胸を締め付ける。
「そっか、当たり前だよな…。阿呆な事言ってごめん」
ハハ…ッと無理矢理に笑ってみた。笑う以外、選択肢が見つからなかったから…。
「……今まで、ありがとうな」
最後まで笑って言いたかったのに、一番伝えたい言葉は喉の奥で震えてしまった。

明日からは、靖貴は隣りに居ない。十年近くも隣りに居てくれた彼は、明日からもう居ないのだ…。
「本当に、今までありがとう」
震える唇を噛み締めて何とか笑顔を作って。でもすぐに笑顔が崩れそうになったから、慌てて靖貴に背中を向けた。彼には、笑顔を覚えていて貰いたいから。
そう思って背中を向けたのに…。

「まぁちゃん、最後まで話聞いて?」
優しい声と共に、背中から靖貴に抱き締められる。
「タ、カ…?」
「友達やった頃になんか戻れんよ。俺やって、ずっと前からまぁちゃんこと好きなんやから」

グイッと腰を掴まれ向かい合うように身体を動かされて、正面から真摯な瞳で見つめられた。
「大好きやけん、俺と付きおうて?」
靖貴の告白に、俺はちゃんと笑顔になっていただろうか。
涙で前が滲んで、もう何も分からない。


★あとがき★
やっとこさ、二人がくっついてくれました。なんか正和がいやに女々しいキャラになってしまって、両想いになるまでに遠回りしてしまった…。
でも、これで心置きなく、次からは二人のラブラブが書けます。やったね、私。



2009/8/13





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