求愛以上、告白未満D


呆気にとられ身動きの取れない靖貴に、角度を変えては何度も何度もキスを送る。チロッと舌を出して靖貴の唇を舐めると次第に正和は息が荒くなってきて、未だに硬直し動けないでいる靖貴の膝に跨ると、靖貴を誘うような色っぽさで服を脱いでいった。
「タカも脱げよ」
一糸纏わぬ姿になった正和は、次に靖貴の服を脱がしにかかって。落ち着いた表情で衣服を脱がしていく裏で、己の馬鹿すぎる行為に正和の胸がズキズキと痛んでいく。

「……なぁ、タカ…無視すんなよ…」
キスをしても裸になっても彼のシャツを脱がしても…靖貴は何も反応を返してくれない。それどころか、不機嫌そうに眉間に深く皺まで刻まれていって。
靖貴の表情に気付いた正和は、靖貴に顔を見られぬよう彼の胸に額を押し付け下を向いた。

……靖貴の表情を見て気付いた。
靖貴は、俺と身体を合わせたいとは思ってないのだと。いくら誘惑しようとも、迷惑にしかならないのだろう。
あの日肌を重ねたのは、単なる一時の気の迷い。あれは、靖貴にとって汚点でしか無いのだ…。
「……ごめん…」
胸が痛くて、張り裂けそうで…このまま死んでしまうんじゃないかと思うくらい苦しくて。こんな馬鹿な事をした俺は、もう二度と靖貴の親友という立場には戻れないだろうと思い、最後に一度だけギュッと強く抱き付いてからゆっくりと身体を離した。

みっともなく肌を晒した姿に今さら羞恥が沸く。こんな骨張った男の裸に欲情するなんてあるわけが無いのに、俺は何て間抜けなんだろうか…。
急いで衣服を身に纏った正和は、泣きそうになるのを懸命に堪え、最後に靖貴にキスをすると部屋を後にした。





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