ヨシノが出ていった。泣いていた。綺麗で壊れてしまいそうな泣き顔。つい胸が高鳴ってしまった。あいつは思っているより弱い。けれどすぐ帰ってくるだろう。あいつにはおれしかいないのだから。

出ていったヨシノを追いかけた方がよかったのか?ヨシノが求めているのはおれの愛情なんだろう。戻ってきたらたくさん愛してやろう。だから早く戻ってきなさいよ。もう夜が明けようとしているのにドアが開く気配はなかった。

寝不足になりながらヨシノのいる仕事場に行くが姿が見えない。扉付近にもたれて、辺りを見渡す。そういえば無理やりおれが事務に異動させたんだっけな。男ばっかりの現場よりこっちの方がまだ安心だからといって。ソファーに座っている大佐身分のヨシノの上司がなにかあったのか、と聞いてくるが、何も答えないでいると、昨日のヨシノの部下の女の子が扉付近までやってきて、おれに囁いた。


「ヨシノさん、風邪引いて休んでますよ。知らないんですか?」

「…お前に関係あるの?」


苛々してしまい、部屋の空気が強張る。すぐにそれをやめてだらけた。少し歩いて、大佐の向かい側のソファーに寝転がったのである。身長が高いのではみ出してしまうのはいつものこと。この部下に話を聞いても仕方ない。ヨシノを裏切った、こいつに。誘ってきたのはこいつ。おれじゃない。だなんて、言い訳して逃げているだけなんだけれども。


「ヨシノは風邪ですよ、大将」

「違う、どこにいんのあいつ」

「…スモーカーの部屋じゃないですか?あいつが報告してきたものですから」

「は?」

「憶測ですけれどね」



沸々と湧いてくる嫉妬。どろどろしていて、胸が気持ち悪い。何故スモーカーの部屋なんだ?仲がいいのは知ってる。なのにどうして男の部屋に行くんだ。もし手出されたらどうすんだ。矛盾しているのはわかっている。しかし、自分のものが取られるのは嫌だ。


「喧嘩しているのですか?」

「ちょっとな。」


さあ、行き先は決まった。



prev:next





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -