午後6時過ぎ、おれのアパートの前に誰か立っていた。まだ火曜日、1週間長ェな。と思いながら葉巻を吸っていた時だった。雨が先程から降っていて辺りが暗いから誰だがわからなかった。しかしそれも一瞬で、ヨシノがずぶ濡れになりながら立っていたのである。思わず傘と葉巻を投げ出して駆け寄った。


「お前何してんだ!!風邪ひくだろうが!!」

「スモーカー。…別れちゃった。今日2年記念日だったからね、アルバム作って、手紙書いて、おいしいご飯を作ってあげたかったのに家に帰ったら私の部下とやろうとしてたみたい。馬鹿だよね、もう笑って…!スモーカー?」


もう悲痛な声は聞きたくなかった。何も考えずに抱き締めたら、ヨシノが思ったよりも細くていい匂いがする。なんていやらしいことを思いつくがそんなことよりもだ。こいつはあいつと別れたのか。やっと解放されるのか。腕に力がこもり、痛いとヨシノに言われるまで気づかなかった。嬉しいと思っているんだろうか、おれは。


「なんでここにいんだよ」

「…女の子信じれないから、スモーカーに泊めてもらおうと思って。私家なくなったからさ」

「お前な…いいのか?」

「お願いします、私スモーカーしか信頼する人いないの」



そんなことを言われてしまったら、断れない。好きな女と共に暮らせるなんて喜んでいいのだろうか。いや、生殺しだ。向こうは何も想ってなどないというのに。

ヨシノを見れば雨でわからなかったが、涙を流していた。目が段々と虚ろになってきて倒れそうだ。一体こいつはいつからここにいたんだ?急いでヨシノを抱えて部屋に向かう。息が荒いので風邪をひいているのだろう。服を脱がすのに躊躇したがそんなことを言っている暇はない。あまり見ないようにしたがどうしても目に入る華奢な体。ああ、こいつが欲しい。おれの変化に気づいたのか、虚ろな目で泣きながら許しを乞うヨシノ。

迷惑だなんて思っていないというのに。それで目が覚めてすぐに脱がしてクローゼットから自分の服を取りだして、着せる。頭を冷やすためにタオルと氷水を持ってきて、それで濡らしているとヨシノはずっと謝ってくる。こいつは気遣いすぎなんだ。


「スモーカー、ごめんね…ごめんね」

「謝るくらいならとっとと治せ」

「う、うん。今日は悲惨な日だね。クザンとも別れちゃうし、風邪ひいちゃうし、本当私ってだめな女…」

「お前のいいところなんかいくらでも知ってる。気づいている奴は気づいてるだろ。あいつは気づかなかっただけだ」

「ありがとう…でもね私まだクザンの事好きなの。あんな酷いことされてもね、どうしても忘れられない。さっきまでなかったことにしようとしても会いたくて仕方ない。なのに私は嫉妬の塊だから、別れちゃったんだ。私が嫉妬しなければまた一緒にいれるのかな…」


ああ、憎い。あの男が憎くて仕方がない。
こんな顔ヨシノに見られたくないため、台所へ行く。今もヨシノの心を締めているのはあいつだけ。どこがいいんだ、あんな浮気野郎。ヨシノもおれも嫉妬の塊。葉巻を一本吸ってヨシノの元へ戻ると、すやすやと寝ていた。涙が溢れていたが。



「おれだけを見てればいいのに」


寝ているヨシノの唇に自分のものをあてる。熱で顔が桃色に染まっており、自分の中のナニカが疼く。止めるべきだが、止まれない。夢中になっているとヨシノが起きそうになり、すぐに引いた。そのまま起きなかったので一安心する。今気持ち伝えても無理な気がする。それで関係が終わるのは嫌だ。おれは頑張るしかないのだ。


くそ、冷静になれよ。と自分を言い聞かせて。



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