今日は私とクザンの2年記念日である。この日の為に自分でアルバムと手紙を作った。アルバムには1年半の思い出が。半年前からクザンは構ってくれなくなったから。でもいい。これを渡せばクザンも変わってくれるかもしれない。2年前は幸せでこんな辛い日々がくるとは思っていなかった。でも。また愛をたくさんくれるクザンが帰ってくる。…かもしれない。

まだ信頼しているのだ。私が一番だと。

こんなこと仕事中に考えていたら、涙が出そうになった。人前では泣かないけれど。しかし、上司が気を配り今日は上がっていいと言われた。本当に周りにはいい人が多すぎる。礼をきちんと言い、クザンのいる家に帰る。

午後5時の話。いつもより早く上がらせてもらった。もうクザンは帰っているはずだ。果たして、記念日を覚えているのだろうか?少しの期待を胸に抱えながら歩く。夕日が慰めてくれているのか、綺麗で感動してしまう。

クザンが覚えていることを願って、ドアを開けたら中から声がした。クザンと女の子の声が。頭が真っ白になり、動けずにいればドアが閉まる音が家に響く。その音で我に返り下を見れば可愛い靴が置いてあった。

心が壊れそうな感覚、胸が締め付けられて痛い。ドアの音に気づかなかったのか、盛り上がっている二人がいるリビングに向かうが、まだ信じたくなくて、リビングのドアノブを持つ手が震えていた。そんな怪しい人影に気づいたクザンはこちらに来た。うつ向いている私にクザンは、


「あー…今日仕事は?」

「…早く上がらせてもらったの。ねえ、クザンなにしてるの?」

「女の子呼んで遊んでただけだよ」

「じゃあ、なんで上半身が裸なの。」

「ごちゃごちゃ聞かなくてもわかるでしょうが。ちょっとごめん、ヨシノが来たから帰って」


ソファーで固まっていた女の子は急いで服を着替えてそそくさと私の横を駆け抜けた。あの子は私の部下で羨ましいとよく言っていたのに、何故そんなことをするのか。嫉妬と情けない気持ちが混じり、なんとも言えない顔になっていることだろう。ドアが開いたまま、クザンは背を向け溜め息をついていた。期待した、私が馬鹿だったんだ。うつ向いたまま話しかける。私が大好きだった背中に向かって。


「今日なんの日か覚えてる?」

「さあ、知らない」

「…もういい。別れよう。私は…!馬鹿なクザンを愛してた。さよなら」


悔しくて、情けなくて、自分で作ったアルバムを投げて背に当たった。クザンは怒ったのか振り返って私を見た。暗い玄関の前で泣いてしまったのだ。今までクザンに弱味を見せたことがなかったのに、泣き顔を思いっきり見られてしまった。クザンの顔をじっくりと見る。もう恋人は最後、さよなら恋人。


「ちょっ、泣いてんじゃないの。好きなんだったら別れる必要はないだろ」

「違う、もう限界なの。これは情があるだけ。私には違う男がいるから。ありがとう、さよなら」

「おい!」


嘘なんかついてみっともない。だって悔しいじゃないか。私だけが想っているばかりで。あんな酷いことをされたのにまだ好きでいる自分に嫌気がさす。悔しくて、なにも持たずに家から飛び出した。追いかけてくれるかと思ったけれど、時間が過ぎてもドアが開く様子はなし。いつの間にか雨が降ってきた。
冷たい雨がこの現実を私に直接わからせようとしているみたいで。しばらく雨に打たれて、冷静になろうとしたが、できない。


所詮、クザンにとって私はそんなものだったんだど思い知らされた。



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