年がら年中、桜が舞ってる島。人々は毎日お花見と夜桜とお酒が大好きで、且つ陽気な人たちばかり。観光名所として、よく人がたくさん来る。そんな街で、私は雑貨の店を開いた。自分の手作りの桜が入ったものや、仕入れたものや、男女問わない雑貨店である。老若男女来てくれ、のんびり営業しようかと最初は計画していたが、予想以上に売上が伸び、大繁盛しているわけである。

店は一人で回していて、正直海軍やめて、私にはこっちの方が向いていると思った。色んな方とお話しができるし、自分の趣味が活かせる仕事であるからだ。カップルがお揃いのキーホルダーを買ったり、お婆さんが簪を買ったりと、必ずお客さんは満足して笑顔になってくれる。私も思わず笑顔になってしまう。噂では誰もが笑顔になる雑貨店として、有名になりつつあるらしい。

自分の仕事には満足しているのだが、やはりどこかで寂しく感じている。寝る時も思い出すのは、あの人。この島に来てから、何人かに告白されても、何も感じなかった。好きになってくれてありがとうとは思ったが、それ以上の感情は湧いてこなかった。


「ヨシノさんは何で恋人ができないの?男の人からモテるのにさー」

隣のおませさんの女の子がいつも店にやってきて、私と話をするのだ。この子も、15歳で恋愛に興味を持ち始める時期なのだろう。恋愛なんて、3年くらい、していない。

「私はね、三角関係にもなったことがあるの。恋愛なんてこりごりなの!…でもその人が忘れられなくてね」

「三角関係!?なになにそれおもしろそう!」

「もうちょっと大人になったら教えてあげるよ。まだ早いね。貴女にも好きな人がいるの?」

「いるわ!近所のお兄さんなんだけど、年下興味ないみたい」

「年齢なんて関係ないの。女の色気出して頑張るべき!これ、あげるよ。このネックレスして、大人っぽい服装に変えよう!」

「うわぁ、ありがとう、ヨシノさん!」

「いいの!ほら、閉店の時間になっちゃった!また報告しに来てね」

「ヨシノさんも、その忘れられない人とうまくいったらいいね!」


バタン、とドアが閉まり、騒がしかった店内も静まる。3年も会ってないのに、向こうは何をしているのだろう。私のこと忘れてるのかな。思い出して、思わず涙ぐんでしまった。

チリンチリン、とお客さんが入ってきた音が鳴る。どうしよう、こんな顔じゃ接客できない。レジのところでしゃがみ込んで、涙を抑えようとしたが、おさまらない。次々と涙が溢れる。3年も経ったのに、まだあの人がいなきゃ、私はだめなんだ。

お客さんは何か買うのだろう、レジのところへ来た。顔は見られたくなくて、うつむいてレジをしようとする。接客態度が悪くて申し訳ない。仕事中なのに、本当に私は何やってるんだろう。


「プ、プレゼント包装ですか?」

「ああ」


懐かしい、声。思わず胸が高鳴る。うつむいてて、顔が見れない。もしかして、あの人なのか?心臓がうるさすぎる。余計に涙が溢れて、たまらない。
ネックレスを包装するときに、話しかけられた。


「彼女のプレゼントなんだ、それ」

「い、いいですね。絶対喜んでくれますよ」

「そう店長さんが言ってくれんなら、間違いねェな」


だめだ、声を聞く度に3年前のことを思い出す。いい加減向き合って顔見ないと。もし、あの人じゃなかったら失礼だし。身体中が騒いで仕方ない。思い切り顔を上げると、忘れられないあの人だった。
涙が溢れて、抱きついてしまった。声を荒げて泣いてしまう。


「ヨシノ、会いたかった。もうお前を離さねェ…!!」

レジのカウンター越しに抱きついていたが、軽々とカウンターを越え、向き合うように、抱き合う。3年、短かったようで、長かった。一時も忘れなかった、この人のことを。

「浮気してないだろうな?」

「私、貴方しか見てなかったもの。会えたから、身体中熱くなってる。こんな幸せがあるんだね」

「探すのに苦労したぞ。手当たり次第、島に行ってな。 ああ、ヨシノ。ヨシノ。ヨシノ」

「苦しいよ…でも幸せ。もう、離さないで、ずっと一緒にいて」


葉巻の匂いが香る軍服の中で抱かれ、優しいキスをした。涙でしょっぱかったが、そんなのも気にならなかった。

愛して、愛して、哀しくて泣いていた。

でもそれ以上に人に愛される喜びを知り、涙を流した。

ずっと貴方が見守ってくれたから、
ずっと貴方がそばにいてくれたから、
ずっと貴方が愛してくれたから、


「スモーカー、愛してるよ」


とびきりの笑顔で、キスをした。



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