夜の堤防は少し肌寒い。波音だけが耳に入る。スモーカー、まだ来てくれないかな。そろそろ仕事が終わって来るはずだ。

その時かけ足でこちらへ向かってくる足音が聞こえてきた。心臓が早くなって、苦しい。息が切れているスモーカーは急いで来てくれたのだろう。ああ、愛しい人。


「遅くなったな…」

「ううん、大丈夫。横、座って?」

「ああ。寒くないか?上着貸してやろうか」

「…ありがとう。スモーカーは優しいね、大事にされてること、実感するよ」


肩にスモーカーの上着を掛けて、隣に座るスモーカの肩に頭を乗せる。ずっとこうしていたら楽なんだろう。大事にしてくれている人と共に生きたら幸せなんだろう。

「ヨシノ、話あんだろ」

「はは、ばれちゃってるね…あのね、私今まで二人の間で揺らいでいたでしょ?心配かけてごめんね。今まで悩んでいたけど、答えが出て「両方ともに付き合わない道か?」…なんでわかるの…?」


スモーカーは葉巻を吸いながら、私の頭に手を置いて、笑った。その笑顔が眩しくて、思わず涙が出た。沈黙が続く中、波音だけが辺りに響く。


「お前のことだから、俺たちのことを思って選ばない選択するんだろう、と考えてた。やっぱり当たってたか。二年間見てきたんだから、わかるぞ」

「スモーカー…!ごめん、ごめんね…!海軍、やめるの。こんな傷つけてばっかりの私でごめんね。でもスモーカーのこと愛してた。スモーカーがいたから乗り越えれたこと、たくさんあったの。幸せだっ…!?」


そのまま顎に手を持たれ、上を少し見上げた瞬間、唇を防がれた。涙でスモーカーの顔が滲んでどんな顔をしていたか、わからなかった。苦しい、苦しくてどうにかなりそう。


「離れにくくなること言うなッ…!離したくなくなるだろ…その、なんだ。…ヨシノ、愛してる。どこにいても見つけ出してやるから、待ってろ」


スモーカーの腕の中は安心できて、別れるというのに幸せいっぱいだった。この匂いとも優しさともお別れ、するのか。またどっと涙が溢れてきた。この海の向こうで、先の見えない未来で、一緒になれたらいい。


「私は違う道へ行くけど、また同じ道になったら、付き合ってくれる…?」

「当たり前だ。見つけたらすぐに結婚する。…悪ィな、もうそうなったら離さねェから」

「待ってるから…でも他の人がいたらどうするの?」

「蹴散らすに決まってる。…お前が出て行く前まで恋人でいいか。耐えれねェ。しっかり覚えておきたいんだよ」


そうキスの嵐が降ってきた。甘くて、幸せな時間。

いつかまた交わる道が来ますように。





prev:next





×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -