図書室であの光景を見た後、帰って風呂入って、ベッドへ入ったが寝れなかった。どうしておれがこんなに落ち込んでいるのだろう。わかってる、まだヨシノを好きだってことくらい。ヨシノはそれ以上に好きでいてくれたことくらい。
なのにおれは裏切ってばかりだった。過去の自分に戻りたい。あんないい女他にいないのに。馬鹿だおれは。
もうヨシノはスモーカーのもの。そう考えたら頬に何か温かいものが流れた。ああ、おれ泣いてるのか。いつ以来だ、泣くという行為は。悔しくて切なくて涙は止まらない。今すぐヨシノに会って、抱き締めて謝りたい。おれの元へ戻ってくれることはねェのか。
枕に自分の顔を押しつけて考えてもただ涙で枕が濡れるばかり。そういえば家に帰れば枕がいつも濡れていた気がする。ああ、ヨシノ。もうおれはヨシノしか愛せねェ。家は片付いてなくて、ヨシノの大切さが身に染みる。いつも任せっきりでおれは何もしてやれなかった。
泣きつかれていつのまにか眠っていた。
そして朝になる。目覚めは最悪、頭が痛い。何もする気が起きないながらも仕事へ行かなければならない。頭が痛くても考えることはヨシノに会いたいということ。
執務室へ向かう途中、窓からヨシノとスモーカーが入ってくるのが見えた。ヨシノは幸せそうに笑っている。あんな笑顔見たのはいつぶりだろう。胸が苦しくて、おかしくなりそうだ。
そのまま立ち尽くしているとスモーカーとヨシノが後ろからやってくる。話し声でわかった。振り返ればヨシノは気まずそうにスモーカーの後ろへ下がった。
もう顔も見てくれねェのか。
「あらら、二人はそうなっちゃったの?」
「ああ、お前はもう何もしなくていい。好きにすればいい」
「ふうん、好きにしていいならヨシノを奪っていきたいけどね」
「…っ」
「もうこいつを傷つけるなと前に言っただろ!」
「スモーカー、大きな声出さないで…皆が来るでしょ」
いつものように振る舞うものの、内心は辛い。どうすればいいんだ。ヨシノが前へ出てきて話す。目の前にはヨシノ。凛とした目で見つめてくる。お前は前へ進むんだな。
「クザン、今までありがとう。私幸せだったよ。でもね、それ以上に辛いことたくさんあったの。スモーカーはずっとそばにいてくれて、慰めてくれたの。そんな優しいスモーカーと共にする。さよならしよう。今からクザンは上司だから、もう私に構わなくていいからね」
「おれの気持ち知らずにね…勝手にさよならされるんだ」
「…」
「おれね、わかった。ヨシノは最高な女だってね。今まで悪かった。どうしたら許してくれる?おれ、好きすぎて辛いんだけど。一緒にいたくてたまらねェ。スモーカーと一緒にいて欲しくねェ。奪い去ってやりてェ。いつも自分のことしか考えられなかった。お前がいて当たり前だった…!だから、戻ってきてくれよ…おれは変わるから、」
何言ってるか、わからなくなる。自分が情けない。泣きそうで顔が歪んでいるだろう。ヨシノも泣きそうで、抱き締めてやろうかと思ったが、スモーカーが間に入ってヨシノを庇う。
「今更すぎる。遅いんだよ。もうヨシノはおれといるって決めた。邪魔するな」
そう睨んで手を掴んで去っていた。ヨシノは涙を流していた。もう何もかもが手遅れなのか。
悔しくてまた泣けてきた。ほんと、おれ情けねェよ…通りかかった女がおれの手を掴んで話しかけてきたが、振り払って執務室へ行こうとするがそれも出来ず倒れてしまった。
「大丈夫ですか!?」
「うるせェな、触らないでくれる?ヨシノだけが触っていいんだ…」
「でも、」
「早く男呼んできて」
頭が朦朧とするなか、意識が飛んでしまった。
ヨシノ、ごめんな。
prev:next
←