「あー暇だ」
部屋でごろごろ、何もすることがない休日。ヨシノは何してんだろう。もう風邪は治ったのか。あれから数日は経った。連絡はなにもない。戻ってくるに決まってるよな。あいつおれのこと好きなんだし、拒んでなかったから。どうせ最後の言葉も嘘に決まっている。早く戻ってこねェかな。部屋も散らかるし、女の子も呼べねェ。女の子連れてラブホでもいくか。
数時間後夜の街を女の子と腕を組んで歩いていた。今日はスタイルは好きだけど顔はあんまり好みじゃない子。お誘いの連絡があったから喜んできた。何日もやってねェし、やりますか。ヨシノのためにやってなかったのになァ…
その時スモーカーとヨシノに遭遇。なんで二人で歩いてんだよ。意味がわかんねェ。向こうも驚いてやがるし、気にくわない。
「青雉ィ…!お前は本当に!」
「いいの、スモーカー。こんなところで暴力沙汰になったらどうするの?スモーカーが損するの。ね?」
「…いくぞ」
スモーカーがおれに詰めかけようとするが、
ヨシノがあいつの肩を押さえて制止する。なにしてんだよ、触ってんじゃねェ。誰の恋人だと思ってんだ。戸惑う女の子の手を振りほどきヨシノに近づく。なんでそんなに震えてんだ。なんでそんなに怯えてるんだ。
「な、に怖がってんの」
「ごめんなさい。スモーカーは悪くないの。許してください」
頭を下げるヨシノに胸が痛い。いつのまにこんなに距離が開いた?まるで他人のようだ。ヨシノ、ヨシノ、そんなに怖がるなよ、笑ってくれ。頼むから。二人立ちすくむ。目も合わせてくれないんだな。女の子に帰ってくれと頼み自分がしてしまった過ちに気づいた。ヨシノはそこまでおれに傷つけられたのか。
「青雉、頼むからこいつに関わるな。わかったか?」
「なんでお前にそんなこと言われなきゃなんねェんだ?」
「…こいつの顔見て何も思わねェのか」
「わかってる、それくらい…」
ヨシノがひどく辛そうに顔を歪ませている。そんな顔、見たくなかった。おれがそうさせてるんだよな。なんでこうなってしまったんだろう。俺の腕のなかにいる幸せそうなヨシノはどこへいったのだろう。
街中、人の目も多い。俺の顔は情けないだろう。何も言わずにふらりと俺は家へ帰った。
喪失した、ものは大きい。
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