午前10時半を回ったところ。どうしても部屋に残してきたヨシノが気になって仕方がない。仕事は後回し。大佐になってすぐなのでたくさんあるのだが、それよりもヨシノを優先したい。同僚に伝えるとにやにやしながら早く行ってやれと言われた。こいつはおれがヨシノをずっと好きであることを知っているのだ。青キジとヨシノが別れたことを言うと本当に自分のことのように喜んでくれていた。
別れて喜ぶだなんて、おれ達は最低な男だと思う。けれどそれよりヨシノが手にはいるのなら、最低な男でいい。急ぎ足でおれのアパートに戻ると、見たくもない光景が目の前にあった。
ヨシノとあいつが抱き合ってキスをしている光景なんて。けれど抵抗をしているヨシノを見て安心するが、何故あいつがここにいるんだ?もうお前のヨシノじゃない。おれの服を脱がそうとするな。階段を走って登り青キジを引き離す。向こうも何故おれがいるのか理解できなかったみたいで、目を見開いて驚いていた。絶対渡さない。睨むと気分を害したのか眉間に皺が寄る。
「スモーカー…?」
顔を紅く染めたヨシノが泣きそうな顔でこちらを見てくる。肩を貸して中に戻ろうとした。ヨシノの体は異常なくらい熱い。手首を掴んで肩に回す時にわかった。こいつが来て一気に疲れが出たのだろう。傷つけることしかできないのか、こいつは
「お前風邪なのに動くな。戻って寝てろ」
部屋へ入ろうとすると後ろから声がする。しつこい野郎だ。
「まだ話終わってないんだけど。おれ、ヨシノと別れてないしね」
「それ以前に、こんなフラフラな奴と落ち着いて話ができんのか?いきなり手出しやがって、こいつが無理してるのがわからねェのか」
「お前と付き合ってる訳じゃないでしょ。二人の問題だから割り込まないでくれる?」
「…しばらくヨシノは預かるからな、お前もそんな熱くなるな。今一緒にいても傷つけるしかできないだろう」
「…手出したらスモーカーと言えども殺すから」
そして閉じられたドア。おれはそんなに二人のことを思っていない。どうすればお前はおれの元へ来るんだ。三人とも嫉妬でおかしくなっている。
隣にいるヨシノを見て胸が苦しくなった。
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