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気になる子がいる。
ずっとうつ向いて掃除をしているあの子
顔はよく見たことはない
訓練の時もずっと走らされているあの子
異世界人と聞いた、あの子が異世界から来たなんて意外だと驚いたのもだいぶ前で
うつ向いて地味そうな子だが、毎朝掃除をしているので真面目だ思っていた。
しかし元帥や参謀、大将に気に入られているのに加えて七武海からも興味を持たれているそうだ
そんな大物なのだろうか
疑問ばかり増えて、今日もおれはこの子を通り過ぎて行く。
「おおおはようございます」
「おはよう。」
こんな一言だけ交わす毎日。
今日は少し会話だけ、しようかと振り返る
「リンゴー!おはよう」
「きゃあっ、デ、デロさん…!おはようございます」
「今日はあれだ、十周増やすぞ」
「ええええ、ほんとですか…」
「あ?おれが嘘つくと思ってんのか?」
「い、いいえ」
おれと同期のデロがその子、リンゴというのか。首に腕を回されていて、苦しそうだ。
なのに嬉しそうで、そんな顔をしていたのか。何も汚れていない笑顔だった
ついそれに見とれているとデロが気づき、手招きをした
ありがたい、話すチャンスをくれた。
「ドレーク、お前なに見てんだよ」
「騒がしいからな、お前は。嫌でも聞こえた」
「あ…!」
リンゴという子はおれの顔を見ると目を見開いて驚いた顔をする
そして何もなかったかのようにうつ向いているが、何かあるのは間違いない。
「お、なんだリンゴ!ドレークかっこいいから緊張してんのか?」
「おい、茶化すのはやめろ。リンゴ、君。どうしたんだ?」
隣で笑いながら茶化すデロを一喝し、背の低い彼女に対して、少し屈んで顔を覗き込んでみた。その行為にまた驚いたのか数歩引き下がる
何故なのかわからないが、あまりいい気はしない
「あの、ごごめんなさい…!気分悪くさせてしまったなら、あ、謝ります…」
うつ向いて謝る彼女に今度はおれが驚いた
顔に感情を出していたか?そうデロに目線で訴えれば首を振っている。何故そう思ったのだろう
数歩離れている彼女に近づいてみる
肩に片手を置くとびくっと体を震わせた。
「気にしなくていい。それより何故そんな反応をしたんだ?おれを知っていたのか?」
「え、その。あなたを前の世界から知っていたので…つい驚いてしまって…本当にすいません」
前の世界?ああ、異世界のことか。
異世界になぜおれの存在が知られている?そんな疑問がたくさん浮かんできたが、今は申し訳なさそうに、眉をひそめて泣きそうになっている彼女を優先しなければ。
「泣かないでくれ、別に責めるつもりはない」
「あーあ、紳士のドレークが泣かせた!これはネタだな。広めてやろう」
そういって、デロは走り去って行った。
残ったおれと彼女はどうすればいいんだろか
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