周りの評判とかどうでもいい
「ミツキさん、また遅刻ですか。しかも大将も揃って」
「ごめんなさい、この方が手間取ってしまって」
執務室のソファーではミツキとクザンが隣に座り、その前にはミツキと同期である男の海兵。周りの海兵もため息をつくしかなかった。この遅刻は何回目であるのか。今日で三回目である。
「いやーでもねミツキちゃんもだめだめなんて言いつつ俺のを締め付けてきたからね」
「めんどくさいわ、今その話じゃないでしょう!私はこの子を食べたいの!」
「な、なんで俺に振るのですか!触らないで下さい、」
収拾がつかない執務室。他の海兵たちも文句を言いたいのだが、言えばミツキの餌食にされることくらいわかっていた。本番はさせてくれないが、開発されるから怖くて言えない。しかも依存してしまうほど上手いのである。でもこちらが求めては相手してくれない。だからミツキは男の海兵からは小悪魔というより悪魔だと評判であった。
ミツキが体を許すのはミツキの気まぐれ。クザンはそのうちの1人である。
「ねえ、仕事終わりちょっとだけ時間くれない?」
「ひッ!」
同期の男の隣に座り、ズボンの上から指でなぞる。耳元では何か囁きながら。男の顔が赤くなってきた時点で周りは〈落ちた〉と確信した。
クザンは寝ているし、もうこの執務室は誰も止められないと思ったが今回は違ったのである。
「ミツキさんッ、報告もあります、だから手を止めてください」
「えぇ?気持ちよさそうにしてるのに?」
「ッあなたは赤犬大将の元へ異動になりました!」
そう叫んだ時、空気は凍った。比喩ではなくてクザンが凍らせた。一気に温度は下がる。吐く息も白くなる。それを一瞬で取り払ったのはミツキであった。瞬きする間にそれをやってのけたので、何をしたのかわからない。
「大将、今ここで何を凍らせているの?」
「すいませんでした」
「わかればいいのよ。それより赤犬大将の元へ異動だって?」
「触るのをやめてもらえませんか、ッ」
「ミツキ」
クザンに警告され、さすがにミツキも手を止めた。その顔は悔しそうであったが、いやらしい笑顔に変わる。心から楽しんでいるようであった。
「いいわ、今晩やってあげるから」
「(こわい)その、元帥のお言葉でして。青雉大将と離れろとのことです。でもミツキさんを自由にすれば色々起きるので、大将の配下に置くことに。黄猿大将とは関係をもっていらっしゃるようなので、赤犬大将と決まりました」
震えながら話す同期にミツキは虐めたくなってしまう。真面目な子ほどはまるとおもしろくなるとミツキは口から漏らす。
「ちょっとミツキちゃん、サカズキのところ行くって言うのに呑気じゃないの」
「私ねまだ赤犬大将とやったことないの。あの人お堅い人だから」
「それがどうしたんだ」
「あのお堅い人が崩れるのが見たいわ」
1人のしたっぱである男が三人に恐る恐るコーヒーを持っていくが、それを手に取り飲みながら愉快そうに笑う。本当にこの人はドSで変態でビッチである。それでも周りはミツキが憎めなかったりする。一部は毛嫌いしているらしいが、実力は確かにあるので追い出せないのだ。その毛嫌いしている人の中にサカズキがいるのだが。
「大丈夫ですか?サカズキさんはあなたのこと毛嫌いしてると聞いたことがありますが」
「あら、心配してくれてるの。可愛いわね!大丈夫よ、そう言われることには慣れてるわ。嫌がる人を落とす甲斐があるじゃない?」
この人には敵わない、そう海兵が思った時クザンはふてくされていた。ソファーにだらんともたれ、不機嫌と明らかにわかる態度を出すのである。この二人の関係は一体何なんだろう。きっと友達以上、恋人未満というものだろう。セックスフレンドともいうかもしれない。わかっていてミツキはそれを無視していたが、耐えきれずクザンから話始めた。
「ミツキ、」
「なによ?大将。男の嫉妬ほど醜いものはないわ」
「…別にそんなもん妬いてねェよ」
「そう、じゃあいいけど」
「でもサカズキとはやんないでくれる?」
「それが妬いてるって言うの。クザンならいつでも相手するじゃない。あんまり我が儘言わないで」
ちなみにアメとムチの使い方が上手い。