あれから1年。付き合った次の日に入籍し、あれよあれよとサカズキさんの側にいることになった。挙式もして、幸せすぎて死ぬんじゃないかとも思った。サカズキさんは私を離さない。ずっと側にいてくれる。仕事中も本当に素敵、と見惚れていれば、照れるから見るなと優しく返される。周りから見ればいちゃついてるだけよね。
幸せな日々を過ごしていた。
「サカズキさん、帰りましょ、…ッ」
「どうした!」
「き、気持ち悪い…」
「病気か…!?医者の元へ行くぞ!」
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「妊娠6週目ですね、おめでとうございます」
「に、妊娠!?」
「ようやった。ミツキ、子どもに何と名付けるか決めよう」
「サカズキさん、お医者さんの前で抱きしめるのは…恥ずかしいわ」
「嬉しゅうてたまらんのじゃァ!早く家に帰るぞ!」
「か、かわいい…着いていくわサカズキさん!」
横抱きされて、颯爽と私たちの家へと戻る。サカズキさんは目に見えて喜んでいた。いつもそんな感情を出す人じゃあないのに。嬉しい反面不安なところもあった。愛している人との子を産めるのは嬉しい。だが、私は親からの愛情をもらったことがない。その私がどう育てることができるのだろう。
ソファーに優しく置かれ、お腹を撫でる。もう新しい生命がここにいるのだ。涙が出てきた。喜びと不安。サカズキさんは頭を撫で、優しく声をかけてくれた。
「なんじゃ、不安なんか」
「今まで話したことがなかったわね…私、親からの愛情を知らないの。仲が悪い夫婦で、お互い不倫相手がいたわ。家にいても邪魔者扱いされるもの。両親とも不倫相手を連れてきて、私の前でセックスするの。そのせいで寂しがりでセックスしかできなかったのかも。こんな話をしてごめんなさい、私がこの子に愛情を注げるのか心配なの」
話し終えた時、横にいるサカズキさんに抱き締められる。涙が止まらない。どんな風に接すればいいのだろう。怖い。
「大丈夫じゃァ。わしらは不倫なんぞせんし、親になるというのもわしらは初心者。過去なんぞ、そんなもの気にせんでええ。ミツキとワシの子どもなんじゃから、可愛いに決まっとる。可愛がるだけで充分。ミツキは素直である意味純粋で真っ直ぐな女じゃァ。子どもと向き合える母親になれる」
「サ、サカズキさん…愛してる」
「わしも愛しておる」
この人と結婚できてよかった。私たちは世界で一番幸せだと言い切れるくらい、幸せだ。この子が無事に生まれてきたら、可愛がってやろう、向き合ってやろう。
「男だとサカズキさんのような真面目になるかしら?」
「男でも女でも軽く人とセックスしちゃならんと教えるべきじゃァ」
「私たちが仲良かったら伝わるわよ。ずっと愛してくれる?」
「当たり前すぎて何も言わん」
そういって唇を、重ねた。
END