あれから、一週間、誰の誘いにも拒否し、毎日サカズキ大将と過ごす日々。恋をしたことに気づいてから、毎日ドキドキしてばかり。

私らしくないことくらいわかってる。海軍本部も私が大人しいと噂が回っている。サカズキ大将のしつけによるものだろうか、と。ちょっと違うけども。

恋なんて、したことなかったわ。サカズキ大将を好きになってから私らしくない。弁当を作ったり、ボタンが外れてたら、つけてあげたり。仕事中も盗み見して、かっこいいなんて思ったり。

もうすぐ仕事が終わる。今日は私の部屋かしら。机を整理していた時、ドアが開いた。


「ミツキちゃ〜ん、久しぶり。寂しかったでしょ」

「クザン…」


入ってきて早々、私を後ろから抱きしめた。それをサカズキ大将に見られたくなくて、手を振り払ってしまった。クザンが驚いて目を見開ける。


「き、今日はそんな気分じゃないの。悪いわね」

「へぇ。珍しいね。何かあった?」

「何もないわ!お手洗い行かせてもらうから、そこから退いて」

サカズキ大将の顔が見れなかった。どんな顔で私たちを見ていたんだろう。今はサカズキ大将だけしか見てないというのに、やめてほしい。

頭を冷やすためにトイレに行き、ドアの前まで来た。でもどんな顔をすればいいか、わからない。他の海兵たちは帰る間際、入らないんですか?と聞いてくるも入れない。


少しドアを開けると話し声が聞こえる。ソファーで向かい側に座っている二人。

「サカズキさァ、ミツキちゃんのこと好きなの?最近噂なってるよ。ミツキちゃんがサカズキにお熱だってね」

「知らんのぅ、そんなこと」

「あの子、結構サカズキに夢中みたいよ。答えてやんないの?」

「尻軽には尻軽としての付き合い方っちゅうもんがある。恋人にはしたくないのう」


やっぱりビッチが恋しちゃ、駄目なのね。黙って部屋に入るも、心臓がうるさい。私は昔のままでよかったのよね。自分らしくないことをするもんじゃなかった。

二人に近寄り、前の私のように振る舞う。強がってなんかないわ。クザンを後ろから、抱きしめる。


「クザン、久々に私の部屋来ない?えっちな気分になってきたわ。さ、早く行きましょ」

「え、ちょ、いいの?遠慮なくやらせてもらうけどさ」

「フン…」

「じゃあ、サカズキ大将、お疲れさまでした!もう二度と近寄りません」


声が震えてしまって、情けない。サカズキ大将の顔を見ると、切なくて、歯をくいしばる。大丈夫よ、忘れたらいいんだから。クザンは立ち上がり、私の腰を持った。いいのよ、これで。

顔が濡れていると思えば、涙が流れていたらしい。サカズキ大将に見られなかったかしら。クザンは私の様子を見て、黙って頭を撫でてくれた。悔しいけど、クザン。できる男ね。静かに啜り泣いた。



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その頃残ったサカズキは、一人頭を抱えていた。あいつが泣くことなんて、あり得ない。クザンの言うちょったことは本当なんか、信じられない。あいつの泣き顔が目に焼き付いて、消えそうにない。

確かに体の関係を持ってから、あいつの態度は変わった。目が合うだけで、顔を紅らめ、わしの横から離れん。…ミツキは体以外に求めてきちょった。それに気づかんと、酷いことを言うてしまった。どうするべきかのう。

最初はあいつのことを心底嫌ってたのにのう。おかしなこともあるもんじゃァ。一旦自分の中で整理してみよう。あいつと恋人になれるんか、過去も受け止められるんか、頭を抱えるばかりのサカズキであった。


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