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「愛しのジョセフ、スピードワゴンを知らないか」
「旅行に行ってるみたいだぜ?」
なんだか嫌な予感がする。何故だろう。職も持たず、ジョセフと遊んでばかりいる。最近スモーキーという少年とも知り合った。彼は黒人だからといって警察官に酷い事をされていたので、ジョセフと一緒に助けたのだ。
今日はエリナとジョセフ、スモーキーと食事に来たのだが、どうにも揉め事が多い。マフィアやも絡まれた。そのマフィアがおかしなことを言う。スピードワゴンが殺されたと。楽しい食事会が台無しだ。
「それが本当だという証拠はあるのか?」
「信じるかどうかはお前たち次第だ」
「エリナばあちゃんを悲しませやがって!」
「ジョセフ、何事にも暴力で解決しようとはするな。それか真実とは限らない。冷静に判断しなさい。スピードワゴンは簡単に死ぬような男ではない。生き延びていると信じている。それとチベットから来た修業僧とは誰だ」
「ストレイツォのことだ。スピードワゴンのじいさんと友人であるのに何故だッ…!」
何故殺害したのだろうか。メキシコで何があった。食事会はお開きとなる。エリナはジョセフの運命を心配していた。石仮面、というとディオが被って吸血鬼になった原因であるらしい。ディオ、ああ、可愛いディオ、ジョナサン。いつから狂ってしまったのだ?
「すまない、少し夜風に当たってくる」
「ミヅキさん…おれも着いていくッ!一人にさせない」
「愛しのジョセフ、君はエリナの側にいてやりなさい。私は平気だ」
玄関でジョセフに腕を引っ張られ、引き止められる。力が強い、そのまま抱き締められた。ジョナサンを思い出してしまう。心配してくれているのだ、可愛い子。
「おれッ、なにもできないけど…」
「ジョセフ、可愛いジョセフ。ありがとう。気持ちだけで嬉しいよ。昔のことを思い出しただけだ」
「それが心配だぜ…ミヅキさん、おれあんたを守りたい。キスしてやりてェ」
「ふふ、いつでもしてあげよう」
そっと唇を合わせる。ジョセフは顔を真っ赤にしながら顔を隠すのだが、隠し切れていない。愛くるしくて、たまらない。
「ジョセフ、愛してるよ」
「お、おれもだぜッ!」
「ほら、エリナのところへいきなさい」
「おう…絶対ェ、早く帰って来いよ!知らねェ奴には着いていかないこと!」
「ジョセフは私の母のようだ。早めに帰るとするよ。可愛いジョセフ、いってきます」
その夜、家へと帰れなかった。
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