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「エリナ、久しぶりだ。全てはスピードワゴンから聞いた。大変だっただろう。強いよ、君は」
ここはアメリカ。スピードワゴンの屋敷で世話になっている。あれから何十年経っていたのだろう。屋敷の大広間で待っていろと言われ、座って本を読んでいると、歓声を上げた老人と何が起こったのかわからなく狼狽している若者がいた。
エリナ・ジョースターとジョセフ・ジョースター。
エリナも年を重ね孫までいるというじゃあないか。涙を流すエリナの背を撫でた。女手一つ、育ててきたのだ。抱きしめると老いを感じてしまう。私にはこれが、老いがない。
「ああ、ミヅキさん…!ずっとあなたが目覚めるのを待っていました…」
「なァ、エリナばあちゃん、この人誰だァー?泣かせるなんてひでェ野郎だな!」
「コラ!そんな口を聞くんじゃありません!この方は私の夫のお姉さんです」
「げーッ!お姉さん、一体何歳なのォ?おれと同じくらいにしか見えねェーッ!」
大袈裟なほど反応するジョセフ。顔はジョナサンそっくりなのに、全く違う。それが可笑しくて笑っていた。エリナも泣きながら笑っていた。ジョセフに近寄り抱きしめる。確かにジョースターの血を受け継いだ若者だ。
「お、おれ老女と付き合う気はないけど、あなただったらいいかもねッ!」
「おもしろい子だ。可愛いジョセフ、私の家族だ。よろしく頼むよ」
「はーい!」
「エリナ、ジョセフ一緒に暮らそうか。私も何か働こう。…この時代は何をすればいいんだ」
働き口を探さなければ、スピードワゴンは働かなくてもやっていけると言うが、まだまだ現役だ。外の世界を見てみたいものだな。
「ふむ、死なないとは暇なものだ」
「ええ!お姉さん、死なないのォ!?」
「…詳しいことはスピードワゴンに聞いてくれ。説明してくれるはずだ。遊びに行ってくる。ジョセフ、行こうか」
「え、いいのッ!いくいく!」
細かいことは気にしないようなので、楽に付き合える。エリナとスピードワゴンはまるで子供のような私に対して笑った。どう進化したのだろうか、この世界は。
…ジョナサン、ディオ。私は生きるよ。君たちがいなくても、楽しんでみせる。君たちも愛している。新しい家族も愛して、生きていくから。上で見守っていてくれ。
「ミヅキさん、泣いてる…?」
「人の死はなんとも、悲しくて辛いものだ。ジョセフにもいつかわかる」
「(どうすればいいんだ、俺はァー!抱きしめるべきなのか、肩を抱くべきなのか!)」
「ジョセフ、君は長生きしてくれよ。ほら、抱きしめよう」
「こ、子供じゃねェからやめてくれ!恥ずかしいぜ!」
「私がしたいだけだ」
街中は初めて見るものばかりで、時代の変化を感じた。
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