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奉仕活動をした後、家へ久しぶりに帰った。貧民街の人たちも活力が出て、少し明るくなった。同じ立場にいたのだから、手伝いはしたい。偶然ダリオが助けたのがジョースター卿ではなかったら、こんなに恵まれていなかったのだから。

しかし、この状況はなんだろうか。


「愛しい弟、ディオ、ジョナサン。これは何の騒ぎだ?」

「ね、姉さん!」

「ディオ、何か悪さをしたのか」


血だらけで荒れた部屋。父さんにナイフが刺さっている。きっとディオが刺したのだろう。久々に見る血に嫌悪しか感じなかった。前の世界では見慣れたのに、今じゃ見たくもない。


「てめェは誰だーッ!ディオの仲間か!?」

「とりあえず『なかったことにしよう』」


この間不思議な力が私についたのだ。ずっと側にいたらしいのだが、気づかなかった。そばにいる私に似た女が本に書き込むと、全部元通りになっていく。血だらけで顔も潰れている男もみるみる元に戻るのだ。父さんのナイフを抜くと傷が塞がる。ジョナサンが腕に抱いているということは息子を庇ったのか。素晴らしい父だ。

一息着いて床にそのまま座った。いつからなのだ。


「な、なにが起こってやがる!」

「あと数分でなかったことになる。さて、君は誰だ?どうしてこうなった?ディオは話さなくていい。君が話しなさい」

「まずお前から名乗り出てもらおう!」

「あーすまない。私はミヅキ・ジョースター。この子たちの姉だ」

「はッ、あなたの名前は聞いたことがある!貧民街の奴から話は聞いているぜ!まるで女神のような方だとな!」

「褒めなくていい。何が起こってるのかわからないようだ。私も周りの皆も」


話で聞く限り、どうやらディオが父さんに毒を盛ったようで。この場に合わない東洋人が毒を売りつけた証拠を見つけた街で、スピードワゴンと出会った。ディオは石仮面を被って人間をやめたらしい。頭を抱えるしかなかった。ディオはそんな子ではないはずだ。

「この場にはスピードワゴンとジョースター一家以外帰ってもらおう。君たちは一度死んだ身だ。これ以上の干渉は許さない」


有無を言わさず出て行かせた。残るは四人。静寂の中、ディオは叫んだ。


「姉さん…もう止められないんだ!おれと来てください!」


ディオに腕を引っ張られ、胸の中へ落ち着く。もうディオは男になったんだ。大きくなった。頭を撫でて落ち着かせる。


「可愛いディオ。私は状況を読み込めていない。話を聞かせてくれ」

「ディオが!僕の父さんを!」

「ジョナサン。ジョナサンも少し落ち着きなさい。さて、ディオ。離してもらおう」

「嫌です、姉さんは渡したくありません」

「駄々をこねるな。あまり怒らせるな。ディオ?わかっているだろう?」


ディオは知っている。一度本気で怒ったことがあり、それを怯えているのだ。ディオが人間をやめたといえ、私の力には敵わない。腕を緩め、解き離れた後父さんを車椅子に乗せた。ジョナサンは泣き続けるので抱きしめる。ジョナサンも大きくなった。


「すまない。怖い思いをしただろう」

「姉さん、僕ッ、姉さんがいてくれたおかげで…」

「何も言わなくていい。私も人間の力を超えた物を持っている。父さんも息子を守ってくれたのですね、ありがとう。愛してます」

「いや、いいんだ…ディオは何故こんなことをしたのか教えてくれるかい?」


皆の視線がディオに集まる。ディオは悪びれる様子もなく、話し始める。


「おれは姉さんと永遠に一緒にいたいだけだ。その為にジョースター一家を乗っ取る計画を立てた。何が悪い!」

「ただのシスターコンプレックスじゃねェか…ッ!その為だけに人を殺めれるのかこいつ!」

「姉さんが人を殺めるなんて、望まないことくらいわかっているだろう!」

「お前達と仲良しこよしでやっていくなんて嫌だ!下衆ども!」

「僕だって姉さんを君に渡したくない!愛してるんだ!」


私のせいか。一度床を思い切り殴ると、床が抜ける。皆が驚きすぎて声を出す暇もなかったが、それをなかったことにした。ロストレコーディング。床を殴ったという記録を失くす。この側に立っているものは私の意思で動いてくれる。元通りになる。


「ね、姉さん…怒らないで…」

「私もこんな人間離れをしている。あァ、ディオ。私のせいでこんな残酷なことをしたのか。心配せずとも私は君と生きるのに。君は吸血鬼になってしまったのか」

「そうだ。一生生きられる」

「それなら私も死なないようにしよう。老いないようにしよう」


スタンド(そばに立っているからこう呼ぶことにする)はいいのか、といったような目線をよこす。弟が自分のために吸血鬼になってしまったのだ。これくらいやらなければ。


『シバラク眠ルコトニナリマスガ、ヨロシイデスカ。老イヲナカッタコトト死ヌコトヲナカッタコトニスルノハ、時間ガカカリマス…』

「ああ、構わない。皆、揉めるのはやめなさい。私が目を覚まさなくとも仲良くしなさい。時間を要する」

「何を…!?姉さん!」


意識が暗転する。心配なことはディオとジョナサンが喧嘩しないことだ。大丈夫だろうか。家族に囲まれて眠るのも悪くない。

愛しているよ。


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中途半端ですが、ここで第一部完です。
このお姉さんがいるとディオはなかなか行動に移さないか、と思いまして。
スタンドは皆に見えていないので、超能力かと思い込まれています。あと馬鹿力なのも姉さんだから。
一度ディオにはキレたことがあります。
女の子を殴って泣かせたのがバレて、壁ドンされますが、壁崩壊。幼いながらも恐怖する。にこりと笑う姉さんが怖い。

目覚めるのは二部が始まる前くらい。




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