その果てに クロのことを考えたらどんどん止まらなくなってしまう私の脳みそや心は、もう完全にクロのことが好きなのだと私を自覚させて、あの事件以来私はクロに会うのが怖くなってしまった。 「おい、みょうじ」 「あ、ごめん!今先生に呼ばれててあとでね!」 そう言ってクロの前から逃げてしまう。 文化祭当日は同じ時間帯で担当だというのに、こんなんじゃいけないってわかってるのに、どうにも止められなくて。 人ごみに紛れてため息を吐く。後悔するくらいならしなければいいのに、とんだアホだなぁ。 こんなにも賑やかなのに、自分の気分は最低レベルだ。なにもかにも自分のせいなのは分かっているのに。 「っ!」 「やっとつかまえた」 突如として襲ってきた腕への衝撃に顔を上げる。聞こえた声にびくりと肩が震えた。 声の主は勿論分からない筈なんてない。 私が悩んでいる原因そのものだ。 顔を上げれば、三白眼が不機嫌そうに私を見下ろしていた。 「先公に呼ばれてんの、嘘だろ」 「く、クロ…」 来い、と腕を引っ張られながら歩く廊下は、そんなに長い距離じゃない筈なのに、とてつもなく長く感じて、しかもクロは長い脚で進むものだから、半分小走りになっていた。 たどり着いたのは、前にクロと一緒に不要なものを入れに来た準備室で、私を中に入れるとクロは後ろ手にその扉を閉めた。 早くなる鼓動はどうやっても止められない状況になっていしまってるのに、クロは相変わらず不満気な顔をしている。 「おい、みょうじ」 「な、なに?」 「お前最近俺のこと避けてるの、なんでだ」 「そ、それは…」 じりじりと距離を詰められて、私も下がるけれどやっぱり所詮は狭い部屋の中である訳で。トン、と当たった背中の感触に気付いた時にはもう遅かった。 「みょうじ」 「う、うん?」 ドクンドクンと五月蠅くなる心臓はもう止められなくて、頭がおかしくなってしまうんじゃないかと思う。眼前いっぱいに広がるクロの端正の顔に何も思わないわけないのに。 このまま好きといってしまえば楽になるのかな。 口を開こうとしたその時だった。 「…なんて顔してんだよ」 「っわあ!!」 クロがぼそりと呟いた言葉は聞こえることなく、無数の自分の髪の毛が視界を遮ってクロの顔まで見えなくなった。 何が起こったのか一瞬わからなくて、でもクロの大きな手が私の頭から外されたのをみて、わしゃわしゃとされたのだと理解した。 「ちょ、ちょっとクロの馬鹿!!」 「知らねー」 「どうしてくれるのよー!朝一生懸命セットしてきたのにー!」 ぼこぼことクロの胸を殴ってもいたくないらしく、にやりと笑ったクロ。 その顔に胸の奥がキュウと縮んで、それを隠す様にまた私はクロを叩いた。 (勘違いしちゃうから本当にやめてほしい…!) 131125*up |