「プルメリア」





「すみませーん、十二番隊です!資料お届けに参りました!」
「うむ、入れ」


七番隊の隊長室前で声を張り上げれば、中から穏やかな返事が返ってくる。あの低くて優しい声が好きで、ノックだけでいいと言われた今でもこうして左陣とのやりとりを繰り返していた。
私って単純で馬鹿だなあと思いながら、扉を開ける。


「狛村隊長、こちらです」
「…………うむ」


前までは名前で呼ばれると変な間があったくせに、今では業務上の呼び方に不満そうな顔をしていて可愛い。ふふっと笑うと、左陣は気まずそうに目を逸らした。


「…………ぬしの言いたいことはわかるのだが、その」
「わかってますよ、狛村隊長」
「…………」
「冗談だからそんなにしょんぼりしなくても」


しゅんと垂れた耳も可愛い。
どちらかというと低めの私の二倍くらい(体感)身長のある男がこうして可愛らしいというのは、如何に。


「時に、名前」
「なに?」
「香水をつけているのか」


すんすんと鼻を動かす左陣。可愛い!
…………それはもう言いとして。


「シャンプー変えたの。におい強かった?ごめんね」
「いや、いい香りだなと」
「そっか」


良かったと笑うと、左陣も目を細めた。手招きをされる。


「こちらに」
「んー」


左陣の膝の上に乗せてもらって、ほぼ真下から見上げる。こうすると左陣は照れてそっぽを向くことが多いけれど、私はこの姿勢が一番好きだ。
左陣は、私の髪に鼻を埋めた。


「…………」
「そんなに気に入った?」
「…………うむ」


意外だった。
左陣は嗅覚に優れているから、こういう人口的な香りはダメかと思っていたのだ。だからこのシャンプーもお試しの小さいものを使ったのだが。


「そんなに気に入ったなら、左陣の分も貰ってこようか?」
「いや」


首筋に左陣の吐息があたって、身体が火照る。


「好きなのは、名前の香りだからかもしれない」


プルメリアの花言葉は、恵まれたひと。
当たってるじゃん、花言葉。


私は柔らかい左陣の胸に身を預けた。






→→→オマケ


「ぷるめりあ?珍しい香りだが、何処で買ったのだ?」

「これ、マユリちゃんのお手製なの。頼んだら作ってくれた」

「…………ではもう使うな」

「え、なんで?」

「なんでもだ!大体自隊とはいえ隊長をちゃん付けというのは…(くどくど)」

「…………左陣、なんか怒ってる?」

「なッ……!」


正解は嫉妬。





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