「その果実」



「さーじーんー」
「…………」
「ねえってば、ごめんって」
「…………」


いつもは真面目で実直で剛健で穏和な彼が不貞腐れてしまったきっかけは、ついさっき。
左陣が(本人的には)隠していたお茶受けを、私がうっかり食べてしまったこと。いつもお菓子が置いてある戸棚とは違うところにあったからおかしいなとは思ったものの、あまりにも堂々と開けたらすぐにわかる場所にあったものだからーーーという言い訳は耳が腐る程言った。
そしたら、左陣が不貞腐れてしまったわけだ。耳が腐れば良かったのに。


「ごめんね」
「…………」
「ごめんなさい」
「…………」


埒が明かない。どうしよう、折角のお休みなのに!まだお昼なのに!
このまま嫌な空気で一緒にいても楽しくないよ。
私は背中を向けている左陣の肩を掴んで揺さぶった。


「何でも言うこと聞いてあげるから許して!」
「!」


左陣の耳がピンとたった。
軽く言った文句がバカ効きである。なんだこれ。
ゆっくりと振り返った左陣は何だか目がマジだった。


「…………本当だな?」
「うえ?あ、うん」


ちょっと嫌な予感がしたけど、頷く以外の選択肢がないような凄みを感じて肯定した。


刹那。


「ちょっ」


左陣によって、壁に押し付けられていた。
顔が近い。キラキラと、何だか少し子どもっぽい輝きをした金色の目で見つめられて言葉をなくした。


「…………いざ」
「ん?」


かまくら?と思っていたら、着物の胸元を大きくはだけさせられた。桃色の下着に包まれた大きな胸がぷるんと飛び出す。反射的に顔が赤くなったが、左陣は手首を掴んだまま離してはくれない。



「え、何?やだ」
「何でも言うことを聞くと言ったのは名前だ」
「でっ、でも!」


今日はだめ!下着が上下で違うから!
心の声は届かず、鼻息の荒い左陣がどんどん近づいてくる。ぎゅっと目を閉じると、左陣の鼻先が私の唯一の自慢である大ぶりな胸の谷間に潜り込んだ。


「ふやぁん!」


もふもふが!もふもふがくすぐったい!
あと左陣がいやらしい!
下着を着けたまま、夢中で私の胸を鼻先でいじっている。
潰して、揉んで、(鼻先を)突っ込んで。左陣様大暴れである。


「やん!やん!」
「良いではないか、良いではないか」




恐ろしいことに、これが三時間ほど続いた。






「…………ごめんなさい」
「…………」
「すみませんでした」
「…………」
「申し訳なかった」
「…………」


三時間も胸で遊ばれて、今度は私が左陣に背を向けていた。
段々しょげていく声にゾクゾクしてしまう。


「…………名前、あの」



そろそろ頃合いか。
さて、私はどんなお願いを聞いてもらおうかな。

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