「帯遊び」



真田名前。
それが今の、私の名前。





「さーすけー」
「はいはーい。今行くよー」


戦国時代に飛ばされて数年が経っていた。
ひょんなことから武田軍にお世話になり、そして何故か真田幸村と結婚した。
未来よりずっと恵まれた人生だと思う。

教科書でイメージしていた忍とはちょっと違う、猿飛佐助がひょっこりと天井裏から顔を出した。


「どしたのー、名前ちゃん」
「帯解いてー」
「もー、まだできるようにならないの?お姫様」
「…………結構難しいもん」
「かわいい顔しても駄目ー。早くできるようになりな」


佐助はそう言ってニコニコと私の頭を撫でた。
これをされると頭がぼうっとする。

ああ、やっぱり、私が欲情するのはこの人なんだと思い知らされる。


佐助の瞳を覗き込んでみるが、キラキラと輝くばかりで気持ちが読めない。
私は帯を引っ張った。


「佐助がやってくれるからいいの!はい、解いて」
「もー」


困ったお姫様だと言いながら佐助が私の帯を丁寧にほどいていく。
たまに腰に当たる甲に、体が跳ねた。


「あっ…………」
「…………」


佐助は終始無言だった。
恥ずかしくなって口元を押さえる。
大好きな手が触れているのに声が出ちゃわないほうがおかしい。


「…………名前ちゃん、何してんの?」
「ぷはっ………けほけほ、なんでもないよー」


息まで止まっててびっくりした。
慌てて口を解放すると、思ったより近くにいた佐助のにおいまで吸い込んでしまって、余計にむせてしまう。
……やらしいな、佐助のにおい。なんでだろ?


「ちょ、名前ちゃん?!」
「…………ふぇ?」
「どこ触ってんの?!」
「おなかー」

何故かちょっとやらしい空気を発する佐助が気になって、腹筋の当たりをサワサワと撫でた。
アレには触らない。
だけど、近いところを触れてみる。
佐助は指に合わせてピクピクと体を震わせた。


「そうだけど……ちょ、ちょっと待って……まずいって……ッ」
「んー?」
「名前ちゃん……んんッ」


私純粋だから何が言いたいのかわかんなーいという顔をして、お腹を撫でる。
腹筋の溝をなぞると、ゾクゾクした。
佐助の吐息が段々と甘ったるくなっていく。


私の体も疼いてくるが、そんなことは感じさせないように触れ続けた。



「名前ちゃ……んッ」
「なーに?」
「もう…………駄目ッ」
「何が?」
「駄目……触らないで……ッ」


びっくりしたふりをして、私は愛撫を止めた。
佐助は「もう終わり?」というような熱のこもった視線で私を舐め回すように見つめている。自分がやめろと言ったくせに。
加虐心がごぽりと溢れた。
うるりと瞳を潤ませて、佐助の胸に身を寄せて彼を見上げる。


「…………佐助、私のこと、嫌いなの……?」
「違くて…………」
「じゃあ……どして」
「…………それは」


言えないよねえ。
私は主のお嫁さんだもの。
ここで襲ったら間違いなく磔だし、抜いてくれでも大問題。現代でいうセクハラだ。
いや、レイ○か。


佐助は少し腰を引いているから、多分ちょっといじっただけでイっちゃうんじゃないかな。

…………ああ、たーのしっ。


「佐助の馬鹿。もう知らない」


わざと怒ったふりをして佐助に背を向けて、正座した。
何度も怒ったふりをしたことがあるから、このあと佐助がどうするかなんて手を取るようにわかる。


「名前ちゃん、ごめん……」
「知らないもん」
「…………名前ちゃん」
「ばーかばーか、佐助ばーか」


駄々っ子のように頬を膨らませてそっぽを向くと、佐助が背後に膝立ちする気配がした。


「もー、ごめんて。あとでお団子買いに行こ?」
「え、いいの?!」


計画通り!
私はクルッと振り返ってそのまま佐助の腰に抱き付いた。
アレに胸を押し当てるように。


「わーい、佐助大好きっ!」
「…………うあッ」


佐助はビクビクと普通ではない震え方をして、私を受け止めた。
私の胸は熱くなる。
比喩ではなく、物理的に。
布越しとはいえ、結構な温度だなっと思った。


「さーすけっ」
「な、なぁに、名前ちゃん」


さて次はどんな風に虐めてあげようかな?






▼  ▲
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -