▼席替えで二度連続隣りの席になった
「越前、もしかして私と隣になりたくて仕組んでる?」
「なんで俺がそんな無駄な事しなきゃいけない訳」
「だって、ねぇ」
鞄を持って黒板に書かれた自分の出席番号の席に行くと、隣に座っていたのは前の席でも隣だった越前だった。
1番最初は確か委員会だったか。楽そうだからという理由で図書委員に立候補したら、偶然越前も一緒だった。その時は入学したてだから越前の事は全然知らなかったけど、それからも調理実習や遠足の班、しまいには男女合同体育のペアなど、事ある毎に越前と一緒になる事が多い。
「お前の方こそなんか仕組んだんじゃないの」
「なんで私がそんな無駄な事しなきゃいけない訳」
「ムカつく」
「越前の真似ですぅ」
そのせいで小坂田さんには随分うるさく言われるし、実際この人は寝てばっかりであまり話さないし、やっと話したと思ったらこんな感じだし。
「でもまぁ、いいんじゃない」
「何が?」
「退屈しないし」
でも不思議な事に、それでも越前の隣は退屈じゃない。むしろなんだか心がホワホワするような、落ち着くような落ち着かないような、そんな気持ちになる事が最近では特に多い。
どういう意味?と問いかけてみるものの、既に越前は頬杖をついてあさっての方向を見ている。私の質問に答えてくれる気配は全く無い。
「…変なの」
最初はなんだこいつ、と思ったけど、窓越しに映った越前の表情は妙に嬉しそうで、それを見た私の気持ちもまた妙にホワホワした。多分あれだ、最近暑くなって来たからちょっと頭がやられてるんだ。そうに違いない。