存在感

『あ』

「ごっ…ごめんなさいいぃいいぃい!!!」



最近忘れてたこと。ここにいる皆さんは、俗に言うイケメンでした。



***



「あぢー…」

「どんな格好してるんすか、溶けそうですよ。丸井さん」

「あー…越前かー…」



俺が稽古場で大の字でくたばってたら、やったら涼しい顔をした越前が話しかけてきた。いやいやなんでこいつこんな涼しそうなんだよぃ、ありえねぇだろぃこの暑さ。8月に入った途端コレって…きっつー。



「ケータリングにさっきかき氷製造機ありましたよ」

「マジで!?早く言えよ!行くぞ越前!」

「え俺もッスか」



んな夏に持って来いのもんがあんなら早く言えよなー!っつーことで、俺は越前を無理矢理連れてケータリング置き場に行くことにした。かき氷とか気ぃ利くー。



「あ、先客いるみたいッスよ」

「うぇ?」



シロップ何かけようかなーとか考えてたら、ふいに越前はそんなことを言い出した。えー、俺早く食いたいんだけど。



「お、てかえみかいんじゃん!」

「ッスね。その隣は…」

「何処にもいねーかと思ったらジャッカルかよぃ」



俺と越前の目には、ちっこいえみかとハゲジャッカルが映ってる。こっちに気付いていない2人に対し、俺達はドスドスと2人までの距離を縮めて行く。



「わっ!」

「ふのおっ!?ブ、ブン!?びっくりしたあぁあぁ」

「ふのおっ、て言う人俺初めて見たッス」

「も、申し訳ない」

「お前らなぁ…」



んで後ろからえみかの両肩を思いっ切り掴んでみれば、えみかは案の定変な声を上げて驚いた。それに越前が別の意味で驚いて、ジャッカルは呆れてる。ちょっとした出来心だろぃ、にしても期待裏切んねーなー!



「えみかー、かき氷あるって聞いたんだけど」

「うん!あるよ!今ジャッくんに作ってたの!」

「…ジャッカル、お前妙なあだ名つけられたな」



どうやら2人はいつのまにか仲良くなったっぽくて、ジャッカルも恒例のあだ名を付けられてた。にしてもジャッくんって…相変わらずよくわかんねぇネーミングセンスだな、まぁウケるからいいんだけどよ。



「松田先生の娘さんッスか」

「あ、どうもどうもー」

「何、越前えみかと挨拶交わしてなかったワケ?」

「そんな機会もありませんでしたし」



お互い軽く頭を下げて挨拶を交わす越前とえみか。へー、初対面とか初耳。てっきりもう全員挨拶済みなのかと思ってたぜぃ。



「松田えみかですー!」

「青学1年の、越前リョーマッス」

「リョマくんねー、よろしくねー」

「…はぁ」



越前の奴、早速えみかのマイペースに乗せられてんなー。むしろ乗せられてない奴見たことねぇけど、とかそんな事を思いながら着々と出来あがって行くジャッカルのかき氷を見つめる。



「はいジャッくん、シロップは何かける?」

「サンキュ。じゃあメロン頼めるか?」

「りょーかい!2人はー?」

「俺はいちご練乳!氷とシロップ多め、練乳超多めで!」

「くっどいもん食べますね…俺はレモンで」

「はーい」



そしてえみかは冷蔵ボックスから氷を取り出して、それを機械に突っ込んで、ガーッと音を鳴らし俺達のかき氷を作り始めた。



「時代は進化したねー、昔は手動で頑張ってたのにー」

「ババくせぇこと言うなって!」

「あははー」



しばらくして出来上がった超大盛りのかき氷と、普通盛りのかき氷。俺と越前はそれぞれ受け取って、んでジャッカルと3人で稽古場に向かって歩き出した。うっめぇー!
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