sweets

「よし、完璧!」



目の前にあるケーキの箱にを大事に抱えて玄関に向かう。夜中の3時まで頑張って作ったこのケーキ、おかげで目の下にはクマがくっきりだけど満足のいくものが出来上がった。



「お前何だそのでっけぇ箱!」

「財前くんへのケーキ!内緒だよお父さん!」

「あぁ、サプライズね。じゃあ俺も四天メンバーと張り切っちゃおーっと」



玄関には既に用意を終えたお父さんがいて、ケーキの意味を話すなり楽しそうに顔を緩ませた。お父さんのこういうフレンドリーなところは結構好きー。



「んじゃ行くか、えみか」

「はーい。お母さん行ってきます!」

「行ってらっしゃーい!」



朝8時、出発です!



***



「財前おっはよー!」

「うわ何や朝からそのテンション、謙也さんキモ」

「(…言われ放題やな)」



背中から財前に飛び付いた謙也は呆れるくらいわかりやすくて、思わず苦笑いがもれる。ま、それでも財前の気ぃ引いといてくれたらえぇわ。さーてどないしよ今日のサプライズ、無愛想な財前を喜ばせる方法…うーん悩むわぁ。



「蔵くん!蔵くん!」

「ん?何や…は?」

「誤解せんとって」



そん時後ろからえみかの声がしたから振り向いたんやけど、そこには千歳しかおらんかった。え、千歳?コイツこない可愛い声しとった?とか思っとったら、後ろからヒョコっとえみかが出て来た。んでまたすぐ隠れる。なんやねん。



「財前に俺達と一緒にいるとこ見られたらいけん、て。ユウジと小春も廊下におるたい、財前は謙也に任せて計画立てよ」

「そういうことな、ほな行こか」

「ちょ、ちぃ!カニさん歩き!」

「はいはい」



そない歩き方しとったら逆に怪しいやろ!まぁでも財前なら確かにえみかの姿見ただけで勘付くかもしれへんしな。

ってな感じで、最後に謙也とアイコンタクトをとって俺らは廊下に出た。



「蔵くん、お父さんも協力するって!」

「おー、先生がおったらリアルさ増すなぁ!」

「嬉しいことったい」



松田親子の親しみやすさに感謝しつつ、俺達はサプライズの内容をあーだこーだと考え始めた。



***



「もう、そんな単純すぎるサプライズじゃつまんないわよ!!」

「なっ、単純言うなや!」

「白石おもんなー」

「ユ、ユユユユウくん蔵くんの額に青筋が」



「なんだか楽しそうだね」

「フフッ、そうだね」



たまたま不二と駅で会った俺はそのまま稽古場まで一緒に来たわけだけど、来てみると廊下にたまってる四天宝寺メンバー+松田親子が何やら計画を立てていた。その様子は実に賑やかで、つい俺達は笑顔になる。



「幸村も混ざってきたら?」

「うーん、入れそうにもない」



皆めっちゃ騒いでるし、松田先生はそれ見て笑ってるし、娘さんは慌ててるし。そんなとこに俺が入ったら余計ややこしくなりそうでしょ?まぁ、それもそれで楽しそうだけどさ。



「おはよう、2人共」

「おはよう」

「おはよ、千歳。一体何の騒ぎだい?」

「今日財前の誕生日たい」



俺達の存在にいち早く気付いた千歳が挨拶をして来たから、ついでに質問を投げかけてみる。すると返って来たのはそんな答えで、ああなるほどサプライズ企画ってことか、とようやく状況を理解した。



「大体は俺達でやる、ばってん盛り上げは協力してくれるか?」

「勿論。そういうのは僕も好きだよ」

「俺も異議はないよ。ただ、どうして先生達まで?」

「先生もサプライズに協力してくれるったい。えみかはケーキを作ってきてくれたと」

「へぇ、良い子だね彼女」



不二の言葉に千歳は笑顔で頷いた。確かに、やられキャラっていうか天然っていうか…そんな感じだけど、幼くて可愛い子だね。



「よし、じゃあユウジの案で決定!」

「そうと決まったら皆にも連絡ねっ!」



一際大きな声で先生と金色が区切りをつけた所から、どうやらサプライズ内容が決まったみたいだ。



「あ、不二と幸村やん。グッドタイミングーえみか、氷帝に伝えてきてくれるか?」

「氷帝…?」

「あれや、座長がおるとこ」

「おっけー蔵くん!」



娘さんは先生から指示を与えられると、そのまま子犬のように稽古場に駆け込んで行った。転びそうで危ないなぁ。



「お2人さーん」



で、俺達には白石を筆頭に四天宝寺メンバーが寄ってきて、サプライズの内容を説明された。



「何かワクワクするね、不二」

「うん、僕こういうの久しぶり」



財前とはあんまり関わったことはないけど、折角の誕生日なら祝ってあげなきゃね。ついでに娘さんにも後で話しかけようっと、そんな事を心に決めて、俺達はようやく稽古場に入った。
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