ハート花火 「ヘイえみかっ!今日は何の日っ!」 「イェイッ、花火の日っ!」 「え何それ怖」 屋上でユウくんと歌練(?)をしてたら、ちょうど入ってきたひっかにそんな鋭いツッコミをされました。いいじゃん、ユウくんこんなに私の前で歌って(?)くれるようになったんだよ!大きな成長! 「おー光う、何しに来たんや」 「何しにて、その話題の花火を見に行く時間ッスよ」 「ほんとだー!」 ひっかの言葉で携帯の時計に目を向けると、そこにはしっかりと19時、と表示されていた。いつもより若干終わるのが早いこの時間。だって今日は昨日唐突にお父さんに知らされた通り、皆さんと花火を見に行くんだもん! 「行こう行こうー!」 「せやなー!」 「うわ、ちょっ」 ユウくんとひっかの腕をとって、私は屋上から飛び出した。ノリノリなユウくんに対してひっかはちょっと不機嫌だけど、うん、問題ないなーい! 「鈍感ウザ…!」 「えっ!?ウ、ウザい…?」 「…はぁ。もうなんでもないッスわ。早く行きましょ」 「行くー!」 …聞き間違えということにしておきましょう。とまぁとりあえずこんな感じで私達3人は稽古場に戻り、明日の練習についてミーティングした後(私はその間1人でメニューを考えてた!)、いよいよ全員で行動し始めました! 「ちびっ子、迷子になったらいかんぜよ」 「だいじょーぶだよ?」 「不安だな」 まーちゃんの苦笑と国さんの心配が私に向けられて、皆さんも同意するように頷く。え、何で?と私は首を傾げるばかり。 「ま、誰か絶対隣にいるようにすれば大丈夫ッスよ。早く行きましょ」 「何や越前、えらい急かすやん。さては楽しみやねんなー!?」 「アンタめんどくさ」 リョマくんのその言葉に謙ちゃんは「何やて!?」ってつっかかる。それを侑ちゃんが止めるけど、次はその2人の間で喧嘩が始まる。わぁごちゃごちゃ! 「子供は見たらアカンでー」 「蔵くーん見えないよー」 私が2人の喧嘩模様を見ていたら、後ろから蔵くん(声でわかった)に目を塞がれた。真っ暗やだー 「おーいお前らー。もたもたしてると置いてくぞー」 そんな私達をスルーして、完全マイペースで先頭を歩くお父さん。あ、ちなみに今日は花火大会がやってる河川敷に行く為に、車じゃなくて徒歩で来ました。更にこの企画は強制参加じゃないにも関わらず、皆さん行くとのこと!嬉しい! 「えみか、髪が乱れている」 「あれ?本当?」 「あぁ」 はしゃぐ私の隣に来た蓮ちゃんはそう言うと、ポニーテールの私の髪の毛を直してくれた。何かお兄ちゃんみたいだ。 「えみか!花火大会ちょっとだけど出店出てるってよ!」 「ほんとに!?食べようねブン!」 「あったりまえだろぃ!」 更に、新たに入った情報に私とブンは大喜び。そんな私達を見て景くんは鼻で笑ってきたけど、いいもん、食欲には逆らいません!むしろ逆らえません! 「楽しみだねー、花火!」 「うんっ!」 満面の笑みのジロくんにつられて私も笑うと、皆さんも笑ってくれた。夜といえど夏だから蒸し暑いけど、そんな事も感じさせないくらい、私は楽しくて仕方ないです! *** 「わー…!」 「す、すごいですね!えみかちゃん!」 「そうだねちょたろ!」 河川敷に着くなり、とりあえずベストスポットを探し始めたメンバー達。しかし探している途中で花火は始まり、その大きな音と煌びやかな花火、儚くも美しく散ってゆく火花の様に全員が見惚れ、結果、早く見入りたいという気持ちが先走り、適当な場所に座る事にしたようだ。 「お、俺何か感動ッス…!」 「ふーん、赤也も意外とロマンチストなんだね」 「…ブチョ、そういうことあんま真正面から言わないでほしいッス」 「ふん、ダセェな」 「あ?うっせーよキノコ」 その切原の幸村と日吉へのあからさまな態度の違いに、他の者は苦笑したり、「たるんどる!」と言ったり(これは1人しかいないが)。兎にも角にも、それでも全員が花火に夢中なのは明瞭だった。 「うおー…」 「丸井君、口が開いてますよ。閉じなさい」 「アホ面なり」 「さっきまで食うことばっか考えてたクセによ…」 口を大っぴらに開けて花火に見入る丸井に、立海メンバーは呆れながらもどこか嬉々とした様子でそれぞれ話しかけた。 「毎年凄くなってるってもっぱらの評判だよな、この花火」 「うんうん、アタシも聞いたことあるわぁ!」 「確かに凄いからね」 宍戸の言葉に金色、不二が反応し、傍らにいる千歳も小さく頷く。どうやら彼もこういったものに感銘を受けるタイプらしく、持参した扇子を仰ぎながら花火に見入っている。 「あ!見てパパ、あれハート型だよ!」 「うむ、よく出来ているな」 「…何か俺いんのにそっちのパパに話しかけられると寂しいなぁ」 「…先生、どんまいッスわ」 軽く泣き真似を見せる松田父の肩をぽんぽん、と叩く財前。それからもメンバーの中には数名雑談を交わしている者達がいたが、次第に話し声は薄れて行き、最終的に、消えた。 「(綺麗だなぁ、本当に…)」 皆さんと一緒だからよけいそう見えるんだろなぁ、などということをサラッと思うえみか。この感性は彼女特有のものだろう。えみかの隣に座る白石は、そんな彼女の横顔を優しげな表情で見つめていた。 最後の花火が打ち上げられた後、メンバー達はそれぞれ笑顔をもらした。 |