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「超ウルトラグレートデリシャス大車輪山嵐!!」

「あらユウくんっ、それ金太郎さんの必殺技じゃないの!」



歩く事数分後。小規模なグラウンドに辿り着いたえみか達は、えみかの父が持ってきた大量の花火をそれぞれ楽しみながら消費している。



「ジャッカルー!花火くわえろよぃ!」

「ふざけんなよお前!?」



男の子ならではの危険な遊びも、この場だからこそ許されることだろう。父はそんな光景を、1人ベンチに座り頬杖をつきながら眺めていた。



「頑張れよー、お前ら」



今回この遊びを企画したのには、父なりの考えがあった。それは本番1ヶ月前を切った今日、彼らの心の焦りが以前より格段に見えてきたからである。

本番が近くなれば多少の焦りが出るのは当たり前のことだが、全てが初心者の彼らはその気持ちがこれまで父が見て来た役者の倍、またはそれ以上あった。そんな彼らに一度リラックスをしてほしいという気持ちを込めて企画したのが、この花火大会諸々なのだ。



「(甘すぎるかねぇ)」



全員が全員舞台初心者の役者を指導をするのは父も今回が初めてであり、最初はそれこそ不安の方が大きかった。しかし、彼らの真っ直ぐな姿勢に次第に安心を委ねるようになったのは明白だろう。



「先生!」

「お、ジロー。どうした?」



そこで父の元に輪から抜け出しやって来たのは、相変わらず笑顔を振りまいている芥川だった。彼は父の前に立つと、急に頭を下げ



「ありがとうございました!!」



そう、大きな声でお礼の言葉を述べた。その声に反応した他のメンバーも周辺に集まり、口々にお礼を述べる。唐突な事態に父は勿論驚き、とりあえず彼らに頭を上げるよう促した。



「い、いきなりどうした?」

「俺達、指導者が先生だから頑張れてます!」

「ほんっと先生に惚れてます!マジで感謝してます!こんな俺達にこんなありがたいことしてくれて、ほんっとにありがとうございます!」



芥川と丸井の放った言葉に対し、父はしばし口をポカンと開け呆気に取られた。しかしその数秒後、すぐにその口元には弧が描かれた。



「お前らには期待してるし、舞台の楽しさと辛さ、どっちも教えたいと思ってる。俺の期待に応えてくれよ」



自分の言葉に更に勢いよく返事をしてくる彼らに、父だけでなく、えみかもまた嬉しそうに笑った。



「おっしゃ、線香花火大会だ───!」



長いようで短い、夏。彼らにとっては1番の勝負どころとも言える、この夏。

本番まで、後少し。
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