朝倉泉、ねぇ。 「オイ宍戸、ボーッとしてんじゃねぇぞ」 「ん、ワリ」 部活中についさっき会った朝倉の事をなんとなーく考えてたら、跡部に注意されて我に返り、再び素振りに没頭する。そういえば跡部もやけにあの女のこと気にかけてるんだよな。後ジローも、と思いベンチで爆睡している奴に視線を移すと、相変わらず何も考えて無さそうなアホ面でいびきをかいていた。まぁコイツは前々から誰々が可愛いとか結構話してたからそこまで驚かねぇけど(それが恋愛感情かっつったら全然違ったが)、やっぱ跡部と長太郎が意外すぎるぜ。 「ふっふふーんー」 長太郎に至っては鼻歌歌ってやがるし。 2人とも気品があって、プラスその容姿のせいか昔っから女にはよくモテた。当の本人達は無関心だったけど。そんな奴らが揃いも揃ってあの地味子ちゃんにハマるなんて、やっぱりどう考えてもおかしい。 「なぁ跡部、泉の脚の写真撮って来てくれへん?」 「黙れこの糞眼鏡が」 …あ、そういえばコイツもか。すっげー存在忘れてた。どいつもコイツもどうしちまったっつーんだよ。 と考えれば考えるほど朝倉の事ばかりが頭を埋め尽くして、いい加減長太郎にマジでキレられるなと思った俺はようやくそこで考える事を止めた。あながち人の事言えねぇのかもしれねぇ。 *** お風呂上りにジュースをコップに注ぎ、同時に携帯をチェックしたら早速鳳君からメールが来た。 ―今宿題終わりました。明日も第一音楽室で待ってます!凄い楽しみです! 文章だけで彼がどんな風な表情を浮かべているかが容易に想像できて、思わず1人で笑う。先輩に忠実なところとか、何事にも全力なところとか、そういう部分は本当に何ていうか…ただただ、可愛い。たまにキズなのは集中しすぎて周りが見えなくなることくらいかな。最初の日とか素でビックリしたし。まぁ、それも今となっちゃもう慣れっこだ。 「こんなもんかな」 ―私は今お風呂上り。うん、明日も楽しみにしてるね!早く行けるように頑張るよー それからすぐベッドにダイブしたら、まだ22時くらいだったけど睡魔には勝てなくて、私は鳴り響く着信音に気付かないまま、眠りについてしまった。 で、次の日の朝も時間がなくて返信できず、結局放課後に物凄い勢いで心配してきた鳳君に笑ってしまったのは内緒にしておこう。 |