*ちょっと暗いような

「東堂ォ」
個人練習の休憩中、珍しく沈黙だったその時を破ったのは喋りが得意な東堂ではなくそれを苦手とする巻島だった。
「何だね、巻ちゃん」
「もしオレが明日死んだらどうする?」
突然の重い質問に一瞬言葉をなくす。が、すぐにフッと笑い「どうしたんだ、急に」と返した。質問に対しての答えではなかったが巻島はさして気にしていない様子で空を見上げた。
「死ってのは、案外近くにあるモンなんだぜ」
明日は我が身なんて言葉もあるくらいだしな、と続ける巻島に東堂は何と言えば良いか言葉を見つけることができない。
「死んだそのときは悲しいけど、いくら大切な人だとしてもだんだん忘れちまうんだヨ。確か古文でもそんなんあったよなァ?」
「……巻ちゃん、何かあったか?」
やっと出た言葉がこんなものとは、東堂は自分をあざ笑う。
「別にィ」
「けど……」
「なんとなくだ、なんとなく。気にすんなっショ」
巻島は立ち上がり伸びをすると自転車に跨る。練習再開だ。しかし東堂は立ってはいるものの未だにそこでじっとしているだけである。
「巻ちゃん」
「何ショ」
「もし明日巻ちゃんが死んだら、オレは思いっきり泣いて叫んで、毎日毎日巻ちゃんを想って祈るよ」
言い放った東堂に巻島はクハ、と笑いを零した。すると東堂は「な、何故笑うんだ!」とさっきまでの真剣な顔を崩して巻島に近づく。
「ありがとヨ、尽八ィ」
恐らく東堂は自分の顔が赤いだなんてことに気づいていないだろう。

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