「巻島さん」
部室で着替えていると隣にいた手嶋に声をかけられた。
「何ショ?」
「首のとこ、どうしたんですか? 怪我……ですか?」
「え?」
まさか、まさかまさか。
慌ててシャワー室に駆け込みそこにある鏡を見ると……、
「嘘、だろ……」
そこには首だけでなく鎖骨や胸のあたりまで痕があった。あいつだ。今すぐ電話をして抗議したかったがお互いこれから部活だ。後にしよう……。
「大丈夫ですか?」
心配気に尋ねる手嶋になんて言い訳しようか悩んだ挙げ句、蚊に刺されたことにした。部活中もなかなか集中できず、金城や田所っちにも迷惑をかけてしまった。それもこれも、
「東堂ぉ!!!」
部活終了を告げる鐘が鳴ったと同時に素早く愛車を片付け誰よりも早く着替え学校を出た瞬間、あいつ……東堂に電話をかけた。
『巻ちゃん! どうし――』
「おめぇふざけんなヨ!!」
『え、何怒って――』
「あれだけ痕はつけるなって言ったっショ!?」
いつもなら東堂がオレの言葉にかぶせてくるが今日は逆だ。歩きながら怒鳴るオレは、端から見たら怖いだろうけど、今はそんな体裁気にしていられない。
『着替えのとき誰かに見られた?』
「後輩に聞かれたショ!!」
『……そうか』
「何でちょっと嬉しそうなんだヨ」
だいたい、いつ付けた。確かに、昨日は東堂に会った。確かに、そういうこともした。というか抵抗もするヒマなく、された。けどオレは痕のことと今日が部活だから最後までやるのはダメだってことも言った。なのに……
『痕をつけたのは巻ちゃんが寝てからだ。気づくかと思ったけど相当疲れていたんだな、全く起きなかった!』
「それはどうでも良いんだヨ、何でつけたっショ!」
『今日が部活だから』
少し間があってからそう言った。
「……は?」
『だって、巻ちゃんがオレのだって総北にも見せつけないと』
「……だからって……」
『巻ちゃん、男は狼なのだよ! 巻ちゃんを狙ってるヤツがいるかも分からない』
「オレを狙う物好きなんか東堂しかいねえショ……」
思わずため息を吐いた。
『ま、巻ちゃん怒って――』
「当然ショ。1ヵ月! そういうの禁止ショ」
『い、1ヶ月!?』
「2ヵ月のが良いか」
『いやいや、1ヵ月で!』
東堂が条件を認めたところでじゃあなと電話を切る。……ちょっとやりすぎた、か? ……東堂はオレが好きでやったことだし……いやでも……まあ次会ったとき、キスくらいなら……してやっても良い……ショ。

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