summertime goodday goodbye 3



頭の上を越えていくテニスボールを目で追ったら、太陽と目が合った。

「ゲームセット、ウォンバイ宍戸、鳳ペア」

審判をしていた2年がそう言うのと同時に、俺のペアである謙也がこっちへ大股で歩いてくる。怒ってます、と顔に書いてあった。わかりやすい奴。
「おい岳人! ぼんやりしとらんと跳べや! お前なら届くやろ!」
「るっせえなー」
「なっ……!」
「はー。わーったよ、跳ぶよ。跳べばいーんだろ。まっ、謙也とダブルス組むことなんてもう無いだろーけどなっ」
こんなにもコンビネーションがズタボロの二人を監督が試合で組ませるとは思えない。謙也と組むのはこの一回きりだろう。俺のペアは一体誰になるんだか。

マネにドリンクをもらおうと、未だごちゃごちゃ煩い謙也を放ってコートから出た。背中に跡部の視線を感じたが、何も言われなかったし、俺からだって何も言いたいことはない。



全国大会まであと数日しかない。だというのに俺は、もやもやした自分の気持ちに苛立っていた。練習に身が入らない。集中が切れる……というか、ふとした拍子に何かが気になって手が止まる。クソ。俺は何に気を取られてるんだ?

横断歩道の信号が青になるのを待っていた。
足音が聞こえて、振り返ると謙也が走ってくるところだった。んだよ、昼間のダブルス、まだ文句あんのか?
「岳人!」
「なんだよ」
「おまっ、相方を置いて帰るなんて、」
「ただの即席ペアだろ」
「わからへんで? 監督も解散とは言うてないし」
「わかんだよ。俺とお前は今日限り。はい解散」
「はー、冷たいやっちゃなあ」
「謙也は暑苦しいっての」

ここの信号は一度赤になると変わるまでが長い。まだかまだかと焦れる自分を、力一杯ため息を吐いて落ち着かせる。謙也もまた気が短く、まだかいな、と一人ごちていた。

「なあ」
こいつは黙っていることが出来ないんだろうか。
「なに」
「なんか悩み事でもあるん? 一日中気ぃ立っとるやん」
「…………ねーよ」
「今の間はなんやねん」
苛々しているのを謙也にまで見抜かれているのか。じゃあ跡部にも宍戸にも日吉にも、もしかしてほとんどの奴に? うわ、かっこわりぃ。
今の間は、そういう間だ。
「なんだっていーだろ」
「やっぱあるんやな!」
「謙也には言わねえ」
「ええやん言うてみ? な? パパッと解決するかもしれへんで?」
「いやだ」
なんでそんなに聞きたがるんだよ。お節介め。

ようやく信号が青になって、俺も謙也も歩き始める。やたら歩くのが早い謙也はどんどん先へ行ってしまう。横断歩道を渡りきったところで俺が横にいないことに気づいたらしく、謙也はそこで立ち止まった。

暑苦しいしお節介だしで、うるせーなあと思うこともあるけど、俺は別に謙也が嫌いなんじゃない。どっちかっつーと好きなほうだ。
ただ、違うだろ、そうじゃないだろと思っている自分がいる。なんだよ。何が違うんだよ。

わかんねえよ。


2014/06/11



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