白石と苗字、なんや最近仲ええな、思ったら付き合っとったらしい。

白石、苗字に対してあんな冷たかったんに、あれで好きやったとか驚きや。

まあ、それより驚いたんは、付き合いだしたあたりから、白石が急に苗字に優しくなったことやけど。

「謙也、さっき苗字と何話しててん?苗字めっちゃ楽しそうやってんけど。」

「あー、消しゴム忘れたって言うとったから、俺のん貸したってん。猫型とかテニスボール型とかいろいろあるでって見せたら喜んでんや。」

結局、可愛すぎて使うのもったいないからって、シンプルな消しゴム借りてってんけどな、と笑いながら言うと、白石はわかりやすくムッスーとした顔になった。

「消しゴムくらい俺かて持っとるわ。」

「まぁ、せやろな。」

「謙也、ちょっと苗字に頼られすぎや。もっと頼りない男になり、今すぐに。」

「無茶苦茶言いなや!」

苗字と白石が仲良くなったんはよかったと思うけど、苗字に優しくなったかわりに、俺に無茶言うことが多くなったんはどうにかして欲しいわ、ほんま。

なんで苗字と仲ええねん、とか言われても、苗字と仲良くなったん、白石より俺のが先やしな。まぁ、それも白石が無茶言う原因の一つな気ぃもするけど。

「あ、白石君、謙也君、さっきの体育すごかったね。バスケもうまいなんて、女子みんなでびっくりしてたんだよ。」

「苗字、俺のこと見てくれとったん?おおきに。」

「おう、苗字!そっちも体育お疲れさん。」

苗字が来た途端に、白石はさっきまでのムスッとした顔をしまって笑顔になった。よかった、よかった。

でも、気づいとるかわからんけど、苗字、俺らに声かけるとき、白石の名前先に呼ぶようになったんよな。

前は絶対、俺を先に呼んどったんに。

白石も、それを聞いて無意識かもしらんけど、なんや喜んどるし。

まぁ、なんだかんだで、いい感じやんな、この二人、と思ってちょっと表情がゆるんだ。





「ん、謙也君何か嬉しいことあったの?」

「苗字、前も言ったけど、謙也がにやけとるときは頭ん中やらしいことでいっぱいやで。近づいたらアカン。」

「なっ、せやから変なイメージ作んなや、アホ!」



謙也君の受難


2012/06/09
花色のせりはさんから、リクエスト企画のお話をいただきました。前サイトにも掲載させていただいていたお話で、せりはさん宅の連載「爽やかに冷たい白石君」の番外編です。せりはさん、ありがとうございました!!


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