魅せる
※ぬるい性描写があるので、15歳以下の方は閲覧しないようよろしくお願いします。
あなたに好かれようとして始めた化粧やおしゃれは、交際を始めた今でももちろん続けている。
彼は化粧が上手いとか、おしゃれだからとかいう理由で私を好いてくれているんじゃないって分かってるけど、あなたの隣を歩く彼女としては、いつでもあなたに似合うような可愛い女でいたいもの。
だから今日も綺麗に睫毛をあげて、自慢の大きな瞳をさらに大きく見せる。唇に淡いピンク色のリップグロスを滑るようにつけ、輝かせる。
濃くも薄くもない、調度良い程度の化粧を済ませ、髪を整え、買ったばかりの可愛らしい服を着て、アントーニョの家までやってきたというのに。
一緒に過ごしていたらなんだかそれらしい雰囲気になってしまって、2人でベッドに行くことになってしまった。
せっかくの可愛い服も全部脱ぎ捨てられるし、髪は乱されてぐしゃぐしゃ、熱を含んだ涙と汗で化粧も落ちる。彼からのねちっこいキスの嵐でグロスも完全にとれてしまった。
とどめに彼はこう言う。
「化粧した顔も可愛えけど、俺はそのまんまのロヴィーナが一番好きやで」
彼の為にしたおしゃれをその彼に否定されるなんて、女としては黙っていられないだろうけど、私はそんなでもない。
むしろ、ありのままの自分を愛してくれているみたいで。
絡め合う指と重なる身体で快楽に溺れ、されるがまま淫らな姿になり、そんな曖昧な意識の中でも、その言葉がとても嬉しかった。
その言葉を貰えるなら、次また会う時も、さらにまた会う時も、どうせ帰る頃には無くなってしまうと分かっていても、私はおしゃれをしていくわ。
巧みで綺麗な言葉で飾られているわけでもない、真っすぐで単純な、あなたらしいその言葉がまた欲しいから。